はじめに
旅行やレジャーの目的で宿泊施設を利用する際、コストや利便性などの観点から「簡易宿所」が選ばれる場合があります。簡易宿所とは、宿泊する場所を多数の人で共用する構造や設備を主とした施設のことを指します。本日は、簡易宿所営業の概要や開業に必要な条件、構造設備基準などについて詳しく解説していきます。
簡易宿所営業とは
簡易宿所営業は、旅館業法の規定に基づく営業許可が必要な宿泊施設の一種です。具体的には、宿泊する場所を多数人で共用する構造や設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業形態を指します。
代表的な簡易宿所の例
簡易宿所には様々な形態がありますが、代表的なものとしては以下が挙げられます。
- ユースホステル
- カプセルホテル
- 山小屋
- 民泊施設
これらの施設は、共用の宿泊スペースを低価格で提供することが特徴です。旅行客やバックパッカーなどのニーズに合わせて、コストパフォーマンスの高い宿泊を実現しています。
簡易宿所営業の許可要件
簡易宿所営業を行う場合は、施設の所在地を管轄する都道府県や政令指定都市の保健所長から許可を受ける必要があります。許可を得るためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 客室の面積基準を満たすこと
- 浴室、便所、洗面所などの設備基準を満たすこと
- 防火対策や避難経路の確保など、安全性を確保すること
- 申請者が成年被後見人や破産者、法令違反者でないこと
無許可で営業を行った場合は、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があるため、必ず許可を得る必要があります。
簡易宿所の構造設備基準
簡易宿所を開業するためには、旅館業法で定められた構造設備基準を満たす必要があります。主な基準は以下の通りです。
客室の面積基準
宿泊者数 | 必要面積 |
---|---|
10人未満 | 3.3平方メートル × 宿泊者数 |
10人以上 | 33平方メートル以上 |
10人未満の宿泊者の場合は、3.3平方メートルに宿泊者数を乗じた面積以上が必要です。10人以上の場合は、客室の合計面積が33平方メートル以上必要となります。
浴室・便所・洗面所の設置基準
- 浴室: 入浴に支障がない適当な数を設置
- 便所: 5人当たり1個以上、30人を超える場合は10人当たり1個以上(半数以上は洋式便器)
- 洗面所: 5人当たり1個以上、30人を超える場合は10人当たり1個以上
これらの設備は、適切な規模と数を備える必要があります。宿泊者の利便性と衛生面に配慮した設計が求められます。
その他の設備基準
上記以外にも、以下の設備基準を満たす必要があります。
- 採光、換気、照明、防湿、排水設備を適切に設置すること
- 階層式寝台を設置する場合、上下段の間隔を1m以上確保すること
- 玄関帳場や管理事務室を適切に設置すること
- 消防設備や非常口、避難経路を適切に確保すること
これらの基準を満たすことで、宿泊客の安全性と快適性を確保することができます。
簡易宿所の開業手続き
簡易宿所を開業する際は、所定の手続きを経る必要があります。主な手順は以下の通りです。
事前相談
まずは、所轄の保健所に事前相談を行います。簡易宿所営業の許可基準や必要書類について確認を行い、開業に向けた準備を進めていきます。
申請書類の作成・提出
次に、必要書類を作成し、保健所に提出します。書類には以下のものが含まれます。
- 営業許可申請書
- 施設の構造設備図面
- 水質検査結果
- 申請者の身分証明書
現地検査
書類審査が通った後は、保健所による現地検査が行われます。施設の構造設備が基準を満たしているかをチェックされます。
営業許可書の交付
現地検査で問題がなければ、保健所から営業許可書が交付されます。これにより、簡易宿所の営業を開始することができます。
簡易宿所営業の留意点
簡易宿所営業を行う上で、以下の点に留意する必要があります。
変更時の手続き
営業内容や施設に変更があった場合は、10日以内に変更届を提出しなければなりません。手続きを怠ると、許可取り消しの対象となる可能性があります。
立入検査への対応
保健所による定期的な立入検査があります。施設の維持管理状況や衛生面をチェックされるため、日頃から適切な対応が求められます。
法令遵守
旅館業法に加え、建築基準法や消防法、風営法など、様々な法令を遵守する必要があります。最新の法令を確認し、違反があれば是正する必要があります。
まとめ
簡易宿所営業は、多数人で共用する宿泊施設を営む事業形態です。開業には許可が必要で、客室面積や設備基準など、様々な条件を満たす必要があります。適切な手続きと法令遵守が求められますが、需要に合わせた宿泊サービスを提供できるメリットがあります。本稿で解説した内容を参考に、簡易宿所営業の開業を検討してみてはいかがでしょうか。