はじめに
民泊などの宿泊施設を経営するためには、様々な法令を順守する必要があります。その中でも、特に重要なのが旅館業法に基づく簡易宿泊施設の許可です。本稿では、簡易宿泊施設の許可取得に関する詳細な情報をお届けします。営業を始める際の手続きから、施設の基準、注意点に至るまで、網羅的に解説していきます。
簡易宿泊施設とは
簡易宿泊施設とは、宿泊する場所を多数の人で共用する形態の宿泊施設を指します。民泊やユースホステル、カプセルホテルなどがこれに該当します。
簡易宿泊施設の特徴
簡易宿泊施設の最大の特徴は、客室を多人数で共用する点にあります。お風呂やトイレ、洗面所なども共有となります。このため、施設の規模は比較的小さく、部屋数は5室未満が一般的です。階層式寝台を備えた施設も簡易宿泊施設に分類されます。
小規模ながらも、簡易宿泊施設は法令上の手続きを経て適切に運営されなければなりません。旅館業法に基づく許可が義務付けられているのがその理由です。
簡易宿泊施設の種類
簡易宿泊施設には、さまざまな種類があります。主なものを挙げると以下のようになります。
- 民泊
- ユースホステル
- カプセルホテル
- 簡易旅館
- ゲストハウス
これらの施設は、共用スペースを持ち、比較的低価格で宿泊できるという点で共通しています。一方で、設備やサービスの質、対象となる層は様々です。旅行目的や予算に合わせて、最適な簡易宿泊施設を選ぶことができます。
簡易宿泊施設の許可要件
簡易宿泊施設を経営するためには、旅館業法に基づく許可が必要不可欠です。ここでは、その許可要件について詳しく見ていきましょう。
客室の基準
簡易宿泊施設の客室は、一定の基準を満たす必要があります。まず客室の延床面積が33平方メートル以上であることが求められます。また、多数人で共用する客室の合計延床面積が、総客室の延床面積の2分の1以上でなければなりません。
宿泊者数が10人未満の小規模な施設の場合は、面積基準が異なります。この場合、宿泊者1人当たり3.3平方メートル以上の面積が必要とされています。
設備の基準
客室以外にも、簡易宿泊施設の設備は厳しい基準が設けられています。具体的には以下の通りです。
- 適切な換気、採光、照明が必要
- 洗面設備、便所、シャワー室などを備える必要がある
- 浴室は男女別々に設置しなければならない
- 防湿や排水設備も適切に整備する必要がある
このように、宿泊者の衛生面や安全面に配慮した設備が求められています。旅館業法に加え、建築基準法や消防法の基準も満たす必要があります。
その他の基準
簡易宿泊施設を営業するには、上記の客室や設備の基準を満たすだけでは不十分です。さらに以下の要件が課されています。
- 玄関帳場の設置(自治体によって義務化されている場合がある)
- 宿泊者名簿の作成と保存
- 施設の標識設置
- 学校や保育所の周辺では、さらに厳しい基準があることがある
管理体制の整備や、周辺環境への配慮が求められるのです。このように、簡易宿泊施設の許可要件は多岐にわたります。
許可申請の手順
簡易宿泊施設の営業許可を取得するには、所定の手続きを踏む必要があります。ここでは、その一般的な手順をご紹介します。
事前準備
まずは、申請に必要な書類を事前に準備しましょう。主なものとしては以下のようなものがあります。
- 営業施設の構造図面
- 付近の見取り図
- 標識の設置場所図
- 各種申請書類
また、手数料の支払いも必要となります。自治体によって金額は異なりますが、1万円を超える場合があります。このように、十分な準備が求められるのです。
事前相談
申請の前に、必ず所管の保健所に相談しましょう。保健所では、次のようなサポートを受けることができます。
- 必要書類の確認
- 手続きの流れの説明
- 施設の基準に関する助言
初めて申請する方は特に、事前相談を活用することをおすすめします。手続きをスムーズに進めるためのアドバイスが得られるはずです。
申請と審査
準備ができたら、保健所に対して正式に申請を行います。提出した書類に基づき、保健所では施設の構造設備が基準を満たしているかどうかを審査します。
審査の過程で、立入検査が行われる場合があります。環境衛生監視員が現地に赴き、施設の状況を確認するのです。このとき、申請者は立ち会う義務があります。
審査の結果、基準を満たしていれば営業許可証が交付されます。一方、不備があれば指摘を受けることになり、是正が求められます。
許可後の対応
営業許可を取得できても、それで終わりではありません。許可後も、様々な手続きや義務があります。
定期報告
施設のメンテナンス状況や衛生管理の実施状況について、定期的に報告する必要があります。また、自治体によっては、浴槽の残留塩素濃度や施設の自主検査結果の報告を求められる場合があります。
報告を怠れば、是正勧告や営業の一部停止処分を受ける可能性がありますので、確実に実施しましょう。
変更届出
施設の構造や設備を変更する際は、変更届出が必要となります。施設の名称や所在地を変える際にも、同様の手続きが求められます。
事前に必要書類を確認し、適切に対応することが重要です。無届の変更は違反行為と見なされる可能性があり、罰則の対象となるおそれがあります。
営業再開届
季節営業などで一時休業していた施設を再開する際は、営業再開届の提出が求められます。再開日の30日前までに手続きを行う必要があります。
こうした手続きを怠れば、無許可営業と判断される可能性があります。適切な届出を心がけましょう。
まとめ
以上が簡易宿泊施設の許可取得に関する主要なポイントでした。客室や設備の基準を満たすことはもちろん、許可申請の手順や許可後の義務にも留意が必要です。
簡易宿泊施設は、比較的小規模で運営しやすい反面、法令を順守する責任も重くなります。一方で、民泊新法や特区民泊に比べて全国的に展開しやすいというメリットもあります。
立地や収益性などを勘案し、適切な形態を選択することが重要でしょう。簡易宿泊施設の開業を検討する際は、本稿を参考にしてください。
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