はじめに
民泊事業は近年急速に普及してきました。しかし、民泊を開業するには様々な法的手続きや要件を満たす必要があります。簡易宿所の許可を取得する方法、住宅宿泊事業法の届出方法、様々な規制への対応など、民泊を始める際の重要ポイントについて解説していきます。
簡易宿所の許可取得
旅館業法に基づき、簡易宿所として民泊を行う場合は、所轄の保健所から営業許可を取得する必要があります。
許可取得の流れ
まず、建築指導課で建築基準法や地域の条例に基づき、旅館業として使用できる物件かを確認します。次に、保健所に事前相談し、設備などの登録要件を満たしているかを確認します。その後、必要な設備の準備を行い、最終的に保健所に簡易宿所の営業許可申請を行います。
申請には、登記事項証明書や図面、水質検査成績書などの書類が必要です。行政書士に依頼すると、申請から許可証交付までの期間は概ね10日程度となります。
許可の要件
簡易宿所の許可を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 客室面積や設備、設置場所の条件を満たすこと
- 消防法に基づく防火対策を講じること
- 水質汚濁防止法や食品衛生法などの関連法規を遵守すること
- 申請者に一定の資格要件があること(違反歴があると許可が下りない場合もある)
費用
簡易宿所の許可申請には、多額の費用がかかります。事前調査で約5万円、新規開業費用として約40万円程度が目安とされています。個人で申請する場合、東京都内では旅館業営業許可証の手数料として約16,500円がかかります。行政書士に依頼すれば手続きは代行してもらえますが、別途費用がかかります。
住宅宿泊事業法の届出
2018年に施行された住宅宿泊事業法に基づき、年間180日までの期間での民泊が可能になりました。届出には以下の手順が必要です。
届出の準備
届出には、以下の書類の用意が必要です。
- 消防法令適合通知書
- 周辺地図
- 安全対策の概要
また、マンションの管理規約や借家の貸主の承諾など、事前の確認も重要です。
届出の手続き
届出は原則としてインターネットの「民泊制度運営システム」から行います。届出後、届出住宅の番号と所在地が県のホームページで公開されます。
届出時には、事業者としての責務が定められています。例えば、宿泊者名簿の記載と3年間の保存、標識の掲示、宿泊者への周辺地域への配慮の説明などが義務付けられています。
他法令への対応
住宅宿泊事業法による届出だけでなく、下記の法令についても手続きが必要な場合があります。
- 消防法
- 水質汚濁防止法
- 食品衛生法
- 廃棄物処理法
自然公園内や市街化調整区域内で営業する場合は、別途の許可が必要です。詳細は所管行政機関に確認しましょう。
まとめ
民泊事業を始めるためには、簡易宿所の許可取得か住宅宿泊事業法の届出のいずれかの手続きが必須となります。いずれの場合も、様々な法令を遵守し、周辺環境への配慮や宿泊者の安全対策を講じる必要があります。無許可営業や法令違反には厳しい罰則もあるため、関連法規を十分理解した上で、適切な手続きを行うことが重要です。