はじめに
民泊事業は近年、国内外の旅行者から高い人気を誇っています。その理由は、ホテルや旅館とは異なり、地元の暮らしに触れられることにあります。小田原市を含む神奈川県西部地域は、富士箱根国立公園に位置し、雄大な自然と歴史ある街並みが魅力的な観光地です。このエリアでは、民泊事業が地域経済の活性化や移住者の受け入れに大きな役割を果たしています。本記事では、小田原市における民泊事業の実態と、行政による支援策について詳しく解説します。
民泊事業の概要
民泊事業とは、住宅を活用して宿泊サービスを提供する事業のことです。国が定める一定の基準を満たせば、旅館業法の適用を受けずに営業が可能となります。小田原市では、箱根町、真鶴町、湯河原町と同様に、営業を開始する前に小田原保健福祉事務所への届出が義務付けられています。
事業形態と義務
民泊事業には、家主が同居している「居住型」と、家主が不在の「非居住型」があります。いずれの形態でも、宿泊者の衛生や安全を確保する義務があります。また、標識の設置や宿泊者名簿の作成、周辺への悪影響防止なども求められます。
特に非居住型の場合は、適切な入浴設備の設置や衛生管理が重要視されています。旅館業の衛生基準を参考にすることが推奨されています。
届出と報告義務
民泊事業を開始するには、「民泊制度ポータルサイト」から登録・ログインし、必要書類を提出する必要があります。外国籍の場合は、追加書類の提出が求められます。代理人による届出や、複数の住戸・棟での一括届出も認められています。
届出後は、2か月ごとに宿泊日数や宿泊者数などを都道府県知事等に報告しなければなりません。報告は原則「民泊制度運営システム」を利用しますが、システム利用が難しい場合は小田原保健福祉事務所に相談できます。
小田原市における民泊の魅力
小田原市は、自然豊かな環境と歴史ある街並みが共存する魅力的な地域です。民泊を通じて、この小田原の魅力を存分に味わうことができます。
Tipy records House
「Tipy records House」は、音楽好きが集まる人気の民泊施設です。オーナーの内田佑介さんは、空き家を改修し、レコードやCDを持参したゲストに割引を提供するユニークなコンセプトで運営しています。
コロナ禍で一時は苦境に立たされましたが、内田さんは地元の仲間と協力し、小田原の魅力を再発見。飲食店や企業とも連携するようになり、事態を打開しました。
お試し移住プログラム
内田さんは、ゲストハウスを活用した「お試し移住プログラム」も立ち上げています。このプログラムでは、移住希望者が小田原の地域に溶け込むきっかけを提供しています。参加者同士や地域住民との交流を大切にしており、約4割の人が実際に移住を決めるほど好評です。
また、若者向けの「ティピーのローカルキャンパス」も企画され、20代の参加者に小田原との関わりを提供しています。このように、民泊事業を通して移住者や若者との交流が深まり、地域への愛着が醸成されています。
行政による民泊事業支援
小田原市では、民泊事業者を様々な形で支援しています。初期費用から運営まで、幅広いサービスが提供されています。
開業支援サービス
- 物件の仲介・販売
- 融資コンサルティング
- 申請・許可・取得の支援
- インテリアコンサルティング
- 家具・家電の購入・設置
- 新築・リノベーション工事
- マニュアルの作成
- プロカメラマンによる撮影
- アクセスガイドの作成
- リスティング情報の作成
- トラブル防止の案内作成
運営支援サービス
- 予約管理
- 鍵の受け渡し
- 清掃
- リネンの管理
- レポートの作成
また、清掃やリネン交換のみのサービスも提供されており、ニーズに合わせてカスタマイズされたプランが用意されています。
旅館業の営業許可申請
小田原市では、旅館業を営む場合は営業許可申請が必要となります。民泊以外の宿泊施設を開業する際は、小田原保健福祉事務所に営業許可の申請を行い、許可を取得する必要があります。
対象となる営業形態
- 旅館・ホテル営業
- 簡易宿所営業
- 下宿営業
新基準への適合が必要
2022年10月1日以降は、旅館業法の一部改正により新たな基準に適合する必要があります。また、2023年1月1日からは浴槽水の水質基準も改正されています。最新の基準を確認し、適切な対応が求められます。
まとめ
小田原市では、民泊事業が地域活性化や移住促進に大きな役割を果たしています。ユニークな民泊施設が多数存在し、移住希望者向けのプログラムも充実しています。一方で、事業を営むには届出や報告義務など、様々な義務が課されています。
市では、民泊事業者に対して幅広い支援サービスを提供しており、開業から運営まで手厚くサポートしています。このように、民泊事業は小田原市にとって重要な存在であり、今後も発展が期待されています。旅館業を営む場合は、許可申請と最新の基準への対応が必要不可欠です。
自然と歴史が調和する小田原市で、民泊を通じた新しい体験を楽しむことができます。民泊事業に関心がある方は、ぜひ小田原市の施策を活用してみてはいかがでしょうか。