はじめに
近年、空き家問題が深刻化しており、有効活用策が求められています。その一つの方法として、空き家を民泊として活用することが注目を集めています。民泊は観光客への宿泊施設の提供と、所有者にとっての収益源の両面でメリットがあるからです。本記事では、空き家を民泊として活用するメリットについて、6つの観点から詳しく解説していきます。
初期投資が抑えられる
空き家を民泊として活用するメリットの一つは、初期投資が抑えられる点にあります。
物件購入費用がかからない
民泊を始める際に最も大きな初期投資となるのが物件購入費用です。しかし、空き家を活用する場合、すでに物件を所有しているため、この費用がかからずに済みます。特に都心部の物件であれば、購入費用が高額になる傾向にあり、この点は大きなメリットといえるでしょう。
また、所有物件を新たに取得する必要がないため、物件探しの手間も省けます。適切な立地条件を備えた物件を見つけるのは容易ではありません。そういった意味でも、空き家を活用することは初期投資の観点から有利だと言えます。
リフォーム費用も節約可能
民泊としての活用を想定すれば、空き家のリフォーム費用も抑えられる可能性があります。最低限の設備さえ整えば宿泊施設として機能するため、大掛かりな工事は必ずしも必要ありません。適切な範囲でリフォームを行えば、収支バランスを取りやすくなります。
また、リフォームの程度によっては、中古物件を購入する場合と比べてもコストが抑えられるでしょう。中古物件を購入する際は、物件の状態に合わせた大規模なリフォームが必須となるケースが多いためです。
宿泊事業の規制緩和もメリット
民泊は宿泊事業ですが、比較的規制が緩やかです。例えば、住宅宿泊事業法に基づく民泊の場合、都道府県への届出さえあれば営業が可能です。設備条件も緩く、年間180日の稼働であれば問題ありません。これにより、法的な手続きが簡素化され、初期投資が抑えられるのです。
このように、空き家を民泊として活用する際は、様々な点で初期投資を抑えられるメリットがあります。
収益を得られる
空き家を民泊として活用するもう一つの大きなメリットは、収益を得られる点にあります。
宿泊料収入が得られる
民泊を営業することで、宿泊料収入を得ることができます。観光需要の高い地域であれば、年間を通じて一定の収入が見込めるでしょう。収入の一部を建物の維持管理費用に充てることで、固定資産税などの支出を賄えます。
また、アパートやマンションの一部屋を民泊化すれば、不動産収入にプラスアルファの収益を生み出せます。空き家全体を活用するだけでなく、一部屋を賃貸と民泊を併用するのも有効な手段です。
物件の資産価値が向上
民泊事業が好調に推移すれば、空き家自体の価値が向上する可能性があります。収益性の高い物件として評価されるためです。将来的に売却することを考えた場合、高値で取引できる可能性が高まります。
実際、民泊の許可を取得しておけば、魅力ある投資物件として手放しやすくなります。許可の有無は、物件価値を大きく左右する重要な要素なのです。
自治体の補助金制度も活用可能
空き家の民泊活用については、自治体による補助金制度が用意されている場合があります。例えば、民泊施設の改修費用の一部が補助される制度があれば、初期投資をさらに抑えられます。
補助金制度の有無や内容は自治体ごとに異なるので、事前の確認が必要ですが、活用できれば収支改善に大きく寄与するでしょう。
観光需要の取り込みが可能
空き家を民泊として活用すれば、近年増加している訪日外国人観光客の宿泊需要を取り込めるというメリットがあります。
ホテル不足の解消に貢献
日本政府観光局の統計によると、2019年の訪日外国人旅行者数は3,188万人と過去最高を記録しました。団体ツアーやビジネス客だけでなく、個人や小グループによる旅行も増加しています。
一方で、リーズナブルな価格帯のホテル不足が課題となっており、民泊がその受け皿として期待されています。実際、国内の民泊施設利用者の8割以上が外国人であり、民泊需要の高さがうかがえます。
宿泊費の節約ニーズに応える
訪日外国人の多くは価格重視の傾向が強く、宿泊費の節約ニーズが高いと言われています。民泊はホテルと比べて安価な料金設定が可能なため、そうした需要に適しています。
また、民泊は短期滞在向けだけでなく、長期滞在者の需要にも対応できます。1か月や数か月単位の長期宿泊料金をリーズナブルに設定できるのは、民泊ならではの特徴です。このように、民泊の柔軟な料金設定が評価されているのです。
旅行者に人気のホームスティ体験
民泊の魅力として、旅行者に人気のホームスティ体験が可能な点も挙げられます。ホテルとは異なり、異国の家庭に宿泊し、生活スタイルに触れられることが大きな魅力なのです。
民泊のウェブサイトには、旅行者の口コミレビューが多数掲載されています。その中には、「ホストの温かい人柄に触れられた」「家庭的なおもてなしを体験できた」といった肯定的な内容が目立ちます。このように、民泊には文化体験としての側面があり、旅行者の支持を集めているのです。
地域活性化に貢献
空き家の民泊活用を進めることで、地域経済の活性化にも寄与できるというメリットがあります。
観光客の増加による経済効果
民泊の活用が進めば、外国人観光客の増加が期待できます。多くの観光客が地域に訪れることで、観光消費額の増加や雇用創出、さらには地域資源の有効活用など、様々な経済波及効果が生まれます。
観光消費額が増えれば、飲食店や土産物店、観光施設などの収益アップにもつながります。また、民泊で雇用を生み出せば、地元雇用の維持・拡大にも役立つでしょう。さらに、観光資源として活用されていなかった地域の歴史や文化、自然など、新たな魅力が見直される可能性もあります。
空き家の適切な維持管理
空き家の民泊活用が進めば、空き家そのものの適切な維持管理を促すことができます。放置されていた空き家が、人の出入りにより手入れが行き届くようになるからです。
その結果、老朽空き家の数が減り、地域の景観や治安の向上が期待できます。また、周辺の住宅価値を下げるリスクも低減できるでしょう。このように、地域社会にとってもプラスの影響があると考えられています。
国際交流と相互理解の促進
民泊は、世界各国から訪れる旅行者と地域住民の交流を生み出す場ともなります。異文化との触れ合いを通じて、国際理解が深まるのです。
民泊のホストや地域住民は、外国人ゲストの受け入れを機に文化の違いを実感します。また、外国人ゲストも、日本文化に触れる機会を得ます。このような相互の理解が進めば、偏見の解消や国際親善につながるはずです。
多様な活用が可能
空き家の民泊活用には、収益獲得だけでなく、様々な可能性があります。
地域コミュニティの活性化
空き家を民泊として活用する過程で、地域コミュニティの活性化が図れる可能性があります。地域住民が協力して民泊運営に携わることで、つながりが深まるからです。
例えば、民泊の受け入れをきっかけに、住民同士の交流会が開かれたり、地域の伝統行事や文化を外国人ゲストに紹介する取り組みが生まれたりすることが考えられます。こうした活動を通じて、地域への愛着が高まり、コミュニティの絆が強化されるのです。
副業としての活用
空き家の民泊活用は、副業としての可能性も秘めています。会社員やフリーランスの方にとって、民泊の運営は手軽に始められるビジネスだからです。
特に、離れた場所にある実家の空き家を活用すれば、遠隔での運営が可能です。民泊管理会社に業務を委託したり、オンラインでの予約管理を行えば、多くの手間をかけずに収益を得られます。このように、民泊は住宅資産の有効活用と副収入獲得の両立に役立つのです。
国内観光の活性化
民泊の活用は、外国人観光客の受け入れ拠点にとどまらず、国内観光の活性化にもつながります。近年は、訪日外国人旅行客以上に国内の観光需要が落ち込んでいます。地方の魅力ある空き家を民泊として活用すれば、そうした課題の解決につながるかもしれません。
例えば、温泉地や自然豊かな地方で空き家を民泊化し、国内旅行者に向けたプロモーションを行えば、地域の知名度向上と観光需要の喚起が期待できます。国内旅行者にとっても、手頃な価格で魅力的な宿泊先を手に入れられるメリットがあるのです。
まとめ
本記事では、空き家の民泊活用におけるメリットについて、様々な観点から解説してきました。初期投資の抑制や収益獲得、観光需要の取り込み、地域活性化への貢献、さらには多様な活用の可能性など、民泊活用にはさまざまな強みがあることがわかりました。
今後、空き家問題の解決策として民泊活用が一層、注目されると考えられます。自治体の支援制度を上手く活用しつつ、安全面や衛生面などの課題にも十分に配慮し、適切な運営を心掛ける必要があるでしょう。空き家オーナーの方は、民泊活用のメリットを改めて確認し、自身の空き家の有効活用を検討してみてはいかがでしょうか。