はじめに
民泊サービスは近年急速に普及しており、多くの人々に利用されています。しかし、従来の法制度では適切な規制がなされておらず、安全性や衛生面での懸念、近隣トラブルの発生など、さまざまな課題が指摘されていました。このような状況を受け、2018年6月に「住宅宿泊事業法」(通称・民泊新法)が施行されました。本記事では、民泊新法に基づく民泊事業の申請手続きについて、詳しく解説していきます。
民泊事業の概要
民泊新法は、人の居住を目的とした住宅を対象に、一時的に宿泊サービスを提供することを認めました。具体的には、年間180日以内の範囲で有償で宿泊サービスを行うことができるようになりました。ただし、一定の設備基準や衛生管理基準を満たす必要があり、事業者には様々な義務が課されています。
民泊の種類
民泊には、以下の2つの形態があります。
- 家主居住型: 住宅宿泊事業者が自ら居住する住宅で宿泊サービスを提供する形態。
- 家主不在型: 住宅宿泊事業者が居住していない住宅で宿泊サービスを提供する形態。この場合、住宅宿泊管理業者に管理を委託する必要がある。
民泊事業の主体
民泊新法では、以下の3つの主体がそれぞれの役割を担います。
- 住宅宿泊事業者: 宿泊サービスを直接提供する事業者。
- 住宅宿泊管理業者: 家主不在型の民泊における管理業務を受託する事業者。
- 住宅宿泊仲介業者: 宿泊サービスの契約の代理や媒介を行う事業者。
届出の義務化
民泊新法では、住宅宿泊事業を行う場合、都道府県知事への届出が義務付けられています。届出には、住宅の状況や事業者の情報などを記載する必要があります。また、届出後は宿泊者名簿の作成や標識の掲示なども義務となります。
申請手続きの流れ
民泊新法に基づく住宅宿泊事業の開始には、以下の手順が必要です。
事前準備
まずは、民泊を行う住宅が法令上の要件を満たしているかを確認する必要があります。具体的には、以下の点を確認します。
- 住宅の用途地域や市街化調整区域の確認
- 建物の構造や設備(台所、浴室、トイレ、洗面所など)の確認
- 消防法令への適合状況の確認
- 賃貸物件の場合は家主の承諾の取得
- 分譲マンションの場合は管理規約の確認
また、必要な書類の準備も行います。主な書類は以下の通りです。
- 住宅の登記事項証明書
- 住宅の図面
- 事業者の定款や登記事項証明書(法人の場合)
- 欠格事由不該当の誓約書
- 消防法令適合通知書
届出手続き
事前準備が整ったら、届出手続きを行います。届出は原則として電子届出となり、国の民泊制度ポータルサイト「minpaku」から手続きを行います。電子届出には、以下の情報を入力する必要があります。
- 事業者の情報(名称、所在地、代表者名など)
- 届出住宅の情報(所在地、構造、設備など)
- 家主不在型の場合は住宅宿泊管理業者の情報
届出後は、審査が行われ、適合していれば受理されます。受理後、標識の設置や宿泊者名簿の作成が必要になります。
自治体の規制への対応
民泊新法に加え、各自治体でも独自の条例が定められている場合があります。営業時間の制限や特定の区域での営業禁止など、自治体ごとに異なる規制がありますので、事前に確認が必要です。
民泊ポータルサイト「minpaku」の活用
民泊新法の届出手続きは、国が運営する民泊制度ポータルサイト「minpaku」から行うことができます。このサイトでは、以下のような機能が提供されています。
電子届出の受付
住宅宿泊事業の届出や変更届出、廃止届出などの手続きを、オンラインで行うことができます。必要書類もここからアップロードできます。
届出情報の公開
届出された民泊施設の情報が公開されています。住所や営業期間、連絡先などを確認できます。
FAQ・マニュアル
民泊新法に関するよくある質問と回答、手続きのマニュアルなどが掲載されており、分かりやすい解説が提供されています。
注意点と留意事項
民泊新法に基づく民泊事業を適切に運営するためには、以下の点に注意が必要です。
関連法令の確認
民泊新法に加え、都市計画法、建築基準法、消防法、旅館業法などの関連法令についても確認が必要です。特に、消防法令への適合は重要な要件となります。
書類作成の注意
届出に必要な書類は多岐にわたり、正確な作成が求められます。行政書士でない一般の方が報酬を得て書類を作成することは法律違反となりますので、注意が必要です。
継続的な義務の履行
届出後も、宿泊者名簿の作成や標識の掲示など、継続的な義務の履行が求められます。また、変更や廃止の際にも所定の手続きが必要です。
まとめ
民泊新法は、民泊サービスの適正な運営を確保するための新しい制度です。事業を開始するには、法令上の要件を満たすことはもちろん、様々な手続きを行う必要があります。届出や書類作成、継続的な義務の履行など、慎重な対応が求められます。一方で、民泊ポータルサイト「minpaku」の活用により、手続きが分かりやすくなっています。民泊事業をスムーズに始めるためにも、関連情報の確認と丁寧な準備が重要となります。
