はじめに
民泊は近年人気が高まっているビジネススタイルですが、適切な許可を得ることが法的に義務付けられています。旅館業法や住宅宿泊事業法など、さまざまな法令を理解し、手続きを進める必要があります。本記事では、民泊の許可申請について、具体的な手順と重要なポイントを詳しく解説します。
民泊のタイプと許可の種類
民泊には大きく分けて3つのタイプがあり、それぞれ必要な許可が異なります。
簡易宿所営業
旅館業法に基づく一般的な民泊の形態です。都道府県知事の許可が必要で、設備基準や消防法、建築基準法など、様々な法令を満たす必要があります。申請手続きが最も厳しいタイプです。
主な申請手順は以下の通りです。
- 建築指導課で物件が旅館業として使用可能かを確認
- 保健所に事前相談し、設備などの登録要件を確認
- 条例に従って設備の準備を行う
- 保健所に旅館業許可を申請する
特区民泊
国家戦略特別区域内でのみ認められる民泊の形態です。認定申請が必要ですが、簡易宿所よりも手続きが簡単です。大田区や大阪市などの特区で実施できます。
住宅宿泊事業(新法民泊)
2018年に施行された住宅宿泊事業法に基づく制度です。オンラインで届出を行えば比較的簡単に民泊を始められますが、年間180日以内の営業に制限があります。
住宅宿泊事業の届出手続き
住宅宿泊事業(新法民泊)を始める際の届出手続きについて解説します。
届出の対象と単位
届出は住宅ごとに行う必要があり、最小単位は台所、浴室、便所、洗面設備が設けられた住居の単位となります。集合住宅の一室でも届出が可能です。
届出書には以下の情報を記載します。
- 住宅の所在地(建物名、部屋番号を含む)
- 役員に関する事項(法人の業務執行者)
- 不動産番号(ない場合は地番と家屋番号)
- 住宅の種類や規模、宿泊者の使用部分の面積など
届出の方法
原則としてインターネットの民泊制度運営システムから届出を行います。インターネットが使えない場合は住所地を管轄する都道府県の担当課に相談してください。
届出には、以下の添付書類が必要です。
- 誓約書
- 賃借人等の承諾書
- 消防法令適合通知書
- 事前周知の実施状況を記載した書類
住宅宿泊管理業の活用
届出住宅に居住していない場合は、住宅宿泊管理業者に管理を委託する必要があります。管理受託契約書の写しを提出することで、届出を行ったものとみなされます。
また、届出住宅の居室数が5を超える場合や、事業者が一定時間以内に届出住宅に赴けない場合も、住宅宿泊管理業者への委託が義務付けられています。
法令の確認と準備
届出に先立ち、関連する法令の確認と準備が欠かせません。
消防法令への適合
消防法令への適合は重要な要件です。消防設備の設置や避難経路の確保など、消防計画の作成と所轄消防署への申請・検査を受ける必要があります。合格すれば「消防法令適合通知書」が交付され、これを届出書に添付します。
建築基準法への適合
民泊を行う物件が建築基準法や地域の条例に適合しているかを確認する必要があります。用途地域の制限や、最低床面積の基準などに注意が必要です。
マンション等の管理規約の確認
マンションやアパートで民泊を行う場合は、管理規約で民泊が禁止されていないかを必ず確認しましょう。管理組合の承認を得る必要があります。
地域における規制と条例
都道府県や市区町村によっては、独自の条例で民泊実施の区域や期間を制限していることがあります。事前によく確認し、対象外の場合は、法令違反にならないよう注意が必要です。
規制区域の除外
一般に、自然公園内や市街化調整区域では、民泊が規制されていることが多いです。例外的に許可される場合でも、手続きが必要です。
大阪府の場合
大阪府では、特区民泊と住宅宿泊事業について、許可・認定・届出施設をウェブサイトで公開しています。また、一部の地域を除き民泊の実施が可能ですが、条例で期間が制限されている場合があります。
他の法令との関係
温泉法や食品衛生法など、民泊におけるサービス内容によっては、他の法令に基づく許可も必要になる場合があります。地域ごとにケースバイケースで確認が必要です。
まとめ
民泊を始めるには、タイプに応じた許可申請や届出が必要不可欠です。関連する法令への理解と準備が欠かせません。特に住宅宿泊事業(新法民泊)の届出では、消防法令や添付書類、宿泊者の安全確保など、多くの手続きと義務があります。地域での規制にも注意が必要です。
しかし、適切に手続きを踏めば、比較的容易に民泊ビジネスを始められます。手続きには専門家の助力を借りるのも一つの選択肢です。民泊は新しいビジネスチャンスですが、法令遵守は何よりも重要です。確実な準備と適正な運営に努めましょう。