宿泊営業許可取得のための完全ガイド:旅館業法のすべてを解説

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目次

はじめに

宿泊業を営むためには、旅館業法に基づく許可が必要不可欠です。この法律は、宿泊施設の健全な発展と利用者に適切なサービスを提供することを目的としています。本日は、旅館業の営業許可に関する重要な情報をお届けします。

営業許可の種類

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旅館業法では、宿泊施設の営業形態に応じて、3つの許可区分が設けられています。

旅館・ホテル営業

一般的なホテルやリゾート施設などが該当します。客室の構造設備基準が比較的厳しく定められています。例えば、一定の客室面積や換気、照明設備などが義務付けられています。

大型ホテルでは、宿泊以外にも飲食店や会議室、プールなどの付帯施設を併設することが多いため、それぞれに関連する許可が別途必要となる場合があります。

簡易宿所営業

民泊やゲストハウス、カプセルホテルなどが該当します。簡易宿所営業は、比較的基準が緩やかに設定されています。例えば、2016年の法改正により、宿泊者が10人未満の場合は1人当たり3.3平方メートル以上の客室面積で許可が下りるようになりました。

一方で、設備面では一定の基準を満たす必要があります。トイレや浴室の共同利用が可能であるため、適切な衛生管理が求められます。

下宿営業

一般的な下宿がこれに該当します。長期の宿泊を前提としているため、設備基準が簡易宿所営業よりも厳しくなっています。例えば、各居室に独立した調理設備や浴室を設置することが義務付けられています。

下宿営業の許可は、近年では比較的少なくなっています。共同生活を前提とした学生マンションなどでは、簡易宿所営業の許可を取得するケースが多くなっています。

許可申請の手続き

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旅館業の営業許可を取得するためには、所定の手続きを経る必要があります。

事前準備

まずは事前に、所管の保健所に相談し、必要な書類や基準について確認を行います。施設の設計図や建築確認書、消防法令の適合証明書なども必要となります。

新規開業の場合は、建物の建設工事が完了した後に申請手続きに入ります。既存施設での開業であれば、施設の現状を把握した上で申請準備を進めます。

申請書類の提出

申請には、以下の書類が一般的に必要となります。

  • 営業許可申請書
  • 施設の構造設備に関する概要書
  • 平面図、配置図、付近見取図
  • 定款や登記事項証明書(法人の場合)
  • 関連法令の適合証明書(建築確認、消防法令など)

申請手数料として、一般的に22,000円が必要となります。

現地調査と許可交付

書類審査の後、保健所による現地調査が行われます。施設の構造設備が基準を満たしていることが確認されると、営業許可が交付されます。

許可が下りるまでには、概ね2週間程度を要します。営業を開始する10日前までに申請手続きを済ませる必要があります。

営業許可の変更・承継・廃止

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一度取得した営業許可についても、様々な変更があれば、所定の手続きが必要になります。

軽微な変更の届出

施設の名称変更や営業者の住所変更など、軽微な変更があった場合は、10日以内に保健所への届出が義務付けられています。

届出が遅れた場合は、過料などのペナルティが課される可能性があります。

重要な変更の承認申請

以下のような重要な変更がある場合は、事前に保健所への承認申請が必要となります。

  • 営業者(法人)の名称・所在地・代表者の変更
  • 施設の増改築
  • 管理者の変更
  • 営業の承継(事業譲渡や相続など)

承認申請には、変更内容に応じた書類の提出と手数料の支払い(7,400円程度)が必要です。

営業の廃止

施設の営業を廃止する場合も、保健所への届出が義務付けられています。廃止届の提出期限は10日以内となっています。

無届けでの営業廃止は違反行為とみなされ、罰則の対象となる可能性があります。

その他の義務と関連法令

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旅館業の営業には、様々な義務と関連法令の確認が必要となります。

宿泊者名簿の作成・保管

旅館業者は、宿泊者の氏名や住所、宿泊日等を記載した宿泊者名簿を作成し、3年間保管する義務があります。テロ対策やセキュリティ確保のためです。

名簿の記載事項は法改正により変更されることがあるため、最新の情報を確認する必要があります。

カスタマーハラスメント対策

2022年12月の法改正により、旅館業者にはカスタマーハラスメント(宿泊客による従業員へのハラスメント)への対応が義務付けられました。従業員への研修の実施や、相談窓口の設置が求められています。

ハラスメント対策は、従業員の労働環境の確保と宿泊サービスの質の維持のために重要です。

感染症対策・差別防止

コロナ禍を受けて、旅館業者には感染症予防対策の実施も義務付けられました。また、宗教や国籍などを理由とした不当な差別の防止が求められています。

今後も、社会情勢に応じて旅館業法の改正が行われる可能性があり、最新の情報をフォローする必要があります。

まとめ

旅館業の営業には、旅館業法に基づく許可が不可欠です。そのためには、施設の構造設備基準を満たすことはもちろん、適切な手続きを経ることが重要です。また、一度許可を取得しても、営業中は様々な義務を果たす必要があります。

旅館業を営む上では、関連法令の理解と遵守が欠かせません。保健所への相談や、専門家へのアドバイスを仰ぐことで、トラブルを未然に防ぎ、円滑な営業につなげることができるでしょう。

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