住宅宿泊管理業申請の完全ガイド:必要要件と手続きのすべて

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目次

はじめに

住宅宿泊事業の急速な普及に伴い、2018年6月に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されました。この法律により、民泊管理業務を行う事業者は「住宅宿泊管理業」としての登録が義務付けられています。本日は、住宅宿泊管理業の申請について、詳しく解説していきます。

申請要件

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住宅宿泊管理業の登録を受けるには、一定の要件を満たす必要があります。主な要件は以下の3つです。

財産的基礎に関する要件

住宅宿泊管理業者は、債務の支払い能力を有していることが求められます。具体的には、負債の合計額が資産の合計額を超えず、支払不能に陥っていないことが条件となります。財務状況を示す最近の決算書の提出が必要となります。

新規の法人で設立後最初の決算期を迎えていない場合は、出資金に関する書類の提出で代用可能です。財産的基礎の要件を満たせないと、宿泊者への損害賠償が困難になる可能性があるためです。

管理業務を的確に遂行するための体制

住宅宿泊管理業務を適切に実施できる体制が整備されていることが求められます。具体的には以下の点が重視されます。

  • 苦情対応や緊急時の連絡体制の確保
  • 遠隔から管理業務を行うための機器の設置
  • 管理業務を遂行する人員の確保と適切な配置
  • 再委託先の管理体制や連絡体制の確保

これらの体制が整備されていないと、宿泊者のトラブルに適切に対応できず、民泊運営に支障をきたす恐れがあります。申請時には、苦情対応体制図や使用機器の詳細、人員体制などを示す書類の提出が求められます。

欠格事由に該当しないこと

登録を受けられない欠格事由が以下に定められています。

  • 心身の故障により業務を適正に行うことができない者
  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 過去5年以内に登録取消処分を受けた者
  • 暴力団員や暴力団関係者
  • 不正の行為をするおそれがある者

これらに該当する場合は、登録が拒否される可能性があります。申請時には、本人確認書類や身元証明書、犯罪経歴書、役員の略歴書など、欠格事由に該当しないことを示す書類の提出が必要となります。

申請書類

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住宅宿泊管理業の登録申請には、様々な書類の提出が求められます。主な提出書類は以下の通りです。

個人の場合

  • 登録申請書
  • 身分証明書(運転免許証、パスポートなど)
  • 住民票の写し
  • 納税証明書(所得税、固定資産税など)
  • 資格証明書(宅地建物取引士、管理業務主任者など)
  • 財産調書
  • 法定代理人の登記事項証明書(未成年者の場合)
  • 誓約書

法人の場合

  • 登録申請書
  • 定款の写し
  • 登記事項証明書
  • 納税証明書(法人税、固定資産税など)
  • 決算書類(貸借対照表、損益計算書)
  • 役員の住民票の写し
  • 役員の身分証明書
  • 役員の略歴書
  • 財産調書
  • 誓約書

これら以外にも、営業所や事務所に関する書類、再委託先の体制を示す書類なども必要となる場合があります。自治体によっては追加の書類提出を求められることもあるため、事前に確認が重要です。

申請手続き

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住宅宿泊管理業の登録申請手続きは、主に以下の流れとなります。

申請書類の作成

必要な書類一式を揃えることが第一歩です。個人・法人の別や営業形態により、求められる書類は異なります。申請書の記入例や様式をよく確認し、記載ミスがないよう注意しましょう。書類の準備には時間を要するため、余裕を持って取り組む必要があります。

書類の収集や記入については、行政書士等の専門家に依頼することをおすすめします。ミスが発覚した場合の手戻りを防げるだけでなく、適切な書類の選定にも役立ちます。

登録実務講習の受講

2023年7月の法改正により、新たに「登録実務講習」の修了が登録要件に追加されました。この講習は、一般社団法人全国農協観光協会が実施しており、対面授業と自主学習から構成されています。

講習の流れは以下の通りです。

  1. 申込み
  2. 自主学習(20時間)
  3. 対面講義・演習(7時間)
  4. 修了試験

受講料は39,600円(税込)で、修了試験に合格すれば「住宅宿泊管理業登録実務講習修了証明書」が交付されます。この証明書がなければ登録申請ができませんので、早めの受講をおすすめします。

申請書類の提出

必要書類と講習修了証明書を揃えたら、民泊制度ポータルサイト「minpaku」から電子申請を行います。主たる営業所を管轄する国土交通省地方整備局に提出することになります。

申請書類に不備がある場合は、補正指示が出されます。期限内に補正を行わないと申請が却下される可能性があるため、注意が必要です。

審査と登録

標準的な審査期間は原則90日以内とされていますが、書類の不備や確認事項があれば延長される場合もあります。申請者の資格要件や財産的基礎、体制面での適格性などが審査されます。

審査が通れば、登録番号が付与され、許可通知が届きます。登録申請時に納付した登録免許税9万円は返還されません。以降、5年ごとに更新申請と手数料の納付が必要となります。

登録後の義務

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住宅宿泊管理業者には、登録後も様々な義務が課されています。

管理受託契約に関する義務

管理受託契約を締結する際には、以下の点について事前に説明する義務があります。

  • 住宅宿泊管理業者の商号や名称
  • 登録番号
  • 委託業務の内容
  • 報酬の額や支払い方法
  • 契約の期間や更新、解約に関する事項

契約締結後は、契約書面を遅滞なく交付する必要があります。契約内容を双方で確認し、トラブル防止につなげることが目的です。

業務遂行上の義務

  • 従業員には住宅宿泊管理業者証明書の携帯を義務付ける
  • 宿泊者名簿など、一定の事項を記載した帳簿を備える
  • 国土交通大臣から報告を求められた場合は、遅滞なく報告する
  • 業務の全部または一部を第三者に委託する場合は、事前に届出が必要

住宅宿泊管理業者はこれらの義務を怠ると、業務停止命令や登録取消しなどの行政処分を受ける可能性があります。法令を遵守し、適切な業務遂行に努める必要があります。

まとめ

住宅宿泊管理業の登録申請は、書類の準備から審査、登録後の義務まで、多岐にわたる手続きが必要となります。特に2023年7月の法改正により、新たな要件が加わったことで一層手間がかかるようになりました。

しかし、適切に登録を受けることで、民泊施設の適正な管理や宿泊者保護が可能になります。事業者の信頼性も高まり、より多くのホストとゲストから支持を得られるでしょう。

申請に当たっては、必要書類のリストアップと準備、手続きの流れの確認など、慎重な対応が求められます。専門家への相談も有効な手段です。要件を一つずつクリアしていき、円滑な事業運営につなげていきましょう。

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