2025年版:住宅宿泊事業法を理解して民泊ビジネスを成功に導く方法

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目次

はじめに

近年、Airbnbなどのプラットフォームを通じた民泊サービスが急速に普及し、国内外の観光客の宿泊ニーズに対応できる新たな選択肢として注目されています。しかし、適切な規制がないまま無秩序に民泊が広がれば、安全性や衛生面での懸念、近隣トラブルの発生など、様々な問題が生じかねません。そこで、2018年6月に「住宅宿泊事業法」が施行され、民泊サービスの健全な普及を目指した制度が整備されました。本記事では、この住宅宿泊事業法について解説するとともに、事業を行う際の手続きや留意点などを詳しく説明していきます。

住宅宿泊事業法とは

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住宅宿泊事業法は、その名の通り「住宅」を活用した宿泊事業を規制する法律です。具体的には、人の居住の用に供されている家屋を1日単位で貸し出す事業を「住宅宿泊事業」と定義し、一定の規制の下で運営できるようにしています。

宿泊日数の制限

住宅宿泊事業では、年間180日を超えて宿泊サービスを提供することはできません。これは、本来の「住宅」としての利用を優先させるためです。したがって、181日目以降の宿泊事業は、旅館業法に基づく許可が必要となります。

なお、宿泊日数の算定方式については、改正されたガイドラインで一部明確化されています。宿泊者の当日キャンセル(no-show)や長期滞在(1か月以上)で賃貸借契約を結んだ場合は、一定の範囲で宿泊日数に算定されない可能性があります。ただし、宿泊サービス提供期間中の実際の宿泊は算定対象となります。

家主居住型と家主不在型

住宅宿泊事業には、「家主居住型」と「家主不在型」の2種類があります。家主居住型とは、住宅宿泊事業者が自ら居住する住宅で事業を行うケースです。一方、家主不在型は、住宅宿泊事業者が住んでいない住宅を活用するケースを指します。

家主不在型の場合、住宅宿泊事業者は住宅宿泊管理業者に対して管理業務を委託する必要があります。この管理業者は、衛生管理や宿泊者への説明、近隣対応などの業務を担います。住宅宿泊管理業者には、適正な業務遂行のための措置が法律で義務付けられています。

届出制と登録制度

住宅宿泊事業を始めるには、事前に都道府県知事等への届出が必要です。届出時には、事業者の情報のほか、住宅の所在地や設備状況、管理業者の情報(家主不在型の場合)などを提出します。

一方、住宅宿泊管理業や住宅宿泊仲介業を営もうとする場合は、国土交通大臣や観光庁長官による登録が義務付けられています。登録の際には、宅建士資格の有無なども確認されます。

住宅宿泊事業の要件

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住宅宿泊事業法では、宿泊事業を行える「住宅」の要件が細かく定められています。適切な住宅を選ばないと、事業を営むことができなくなるため、十分な理解が必要です。

設備要件

住宅宿泊事業で使用できる住宅は、台所、浴室、便所、洗面設備を備えている必要があります。この設備要件を満たさない場合、「住宅」とはみなされず、事業を行うことはできません。

また、外国人観光客の利便性を高めるため、設備の案内や交通情報を外国語で提供することも求められています。宿泊者が快適に過ごせるよう、細かい配慮が欠かせません。

居住要件

法律上の「住宅」には、次のような居住要件が課されています。

  • 現に人の居住の用に供されている家屋
  • 人の居住の用に供されることが確実と見込まれる家屋
  • 入居者の募集が行われている家屋

つまり、事務所やガレージ、倉庫といった建物は、住宅宿泊事業の対象外となります。人が実際に生活をする場所でなければ、「住宅」とは認められないのです。

地域による規制

住宅宿泊事業については、国の法律に加えて、地方自治体が独自の条例を定めることができます。例えば、三重県や高知市では、学校や保育園の周辺で事業を制限したり、期間や時間帯に一定の制約を設けたりしています。

このように、地域の実情に応じた規制が設けられることがあるため、事業を行う際は自治体の条例などを確認する必要があります。地域住民の生活環境に配慮することが重視されているためです。

住宅宿泊事業の届出手続き

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住宅宿泊事業を始めるには、所定の手続きを経る必要があります。届出から開業準備、運営に至るまで、それぞれの段階で確認すべき点がありますので、手順を追って説明します。

事前の法令確認

届出に先立ち、住宅宿泊事業法だけでなく、関連する都市計画法、消防法、下水道法、廃棄物処理法、食品衛生法、温泉法、建築基準法などの法令について確認しましょう。これらの法令を順守できない場合、事業を営むことはできません。

特に分譲マンションなどで事業を行う際は、管理組合の同意を得る必要があります。周辺住民への事前説明も欠かせません。トラブルを未然に防ぐためにも、入念な準備が重要となります。

届出と標識の発行

住宅宿泊事業を始めるには、都道府県知事等への届出が必須です。届出時に提出する書類には、次のようなものがあります。

  • 事業者の商号や役員情報
  • 住宅の所在地や設備状況
  • 管理業者の情報(家主不在型の場合)
  • 欠格事由に該当しない旨の誓約書

届出が受理されると、標識の交付を受けることができます。この標識は、宿泊施設の見やすい場所に掲示する義務があります。

電子申請の活用

従来は電子署名や電子証明書が必要でしたが、法改正により身分証明書の写しを提出すれば、電子申請が可能になりました。書類の準備や提出がよりスムーズになり、事業者の利便性が高まっています。

ただし、申請内容に不備があると受付されない可能性があるため、事前の確認は欠かせません。また、内容確認に日数を要する場合もあるので、余裕を持った対応が賢明でしょう。

住宅宿泊事業の運営

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住宅宿泊事業を適切に運営するには、法令で定められた様々な義務を果たす必要があります。衛生管理から安全対策、宿泊者名簿の作成まで、きめ細かな対応が求められます。

衛生管理と安全対策

住宅宿泊事業者は、宿泊者の健康と安全を守るため、以下のような措置を講じなければなりません。

  • 設備の衛生的な管理
  • 火災や災害時の避難経路確保と案内
  • 宿泊者一人当たりの最低床面積の確保

特に家主不在型の場合は、管理業者が宿泊者への説明や対応を適切に行う必要があります。宿泊施設の安全性を常に確保することが重要です。

宿泊者名簿の作成と保管

住宅宿泊事業者は、宿泊者の氏名、国籍、宿泊日、宿泊プランなどを記録した名簿を作成し、1年間保管しなければなりません。都道府県知事から提出を求められた場合は、速やかに提出する義務があります。

宿泊者名簿は、トラブルの発生時の対応や統計データとしての活用が想定されています。適切な記録と管理が欠かせません。

年次報告の義務

住宅宿泊事業者は、毎年偶数月の15日までに、前年の宿泊日数や宿泊者数、国籍別の内訳などを都道府県知事等に報告しなければなりません。この年次報告を怠ると、改善命令や事業の全部または一部の停止命令が下される可能性があります。

報告内容の正確性を期すため、しっかりと記録を取っておく必要があります。宿泊事業の適正な運営状況を示す重要な書類だからです。

違反への対応

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住宅宿泊事業法に違反した場合、法に基づく厳しい措置が講じられる可能性があります。違法な民泊サービスが行われていれば、速やかに通報する必要もあります。

住宅宿泊事業の停止・廃止命令

法令に違反するなどして、住宅宿泊事業を適正に運営することが困難と認められる場合、都道府県知事は事業の停止や廃止を命じることができます。

違反行為の内容によっては、過料や懲役刑が科される可能性もあります。法を無視して事業を続けることのリスクは極めて高いといえるでしょう。

無許可・無届の民泊への対応

住宅宿泊事業法に基づく届出を行わずに民泊を営むことは違法です。このような無許可・無届の民泊サービスについて、情報を得た場合は管轄の保健所に通報することが求められています。

違法な民泊が横行すれば、健全な事業者が不利益を被ることにもなりかねません。制度の適正な運用のためにも、通報は重要な役割を果たします。

まとめ

住宅宿泊事業法は、民泊サービスが適切に運営されるよう、様々な規制を設けています。宿泊日数の制限から、届出制度、住宅の要件、義務事項まで、幅広い点が定められています。

一方で、法律や条例の細かい運用は、地域によって異なる場合があります。住宅宿泊事業を始める際は、事前に自治体の窓口に相談し、関連法令を確認する必要があります。手続きを適切に行えば、観光需要に応えつつ、地域住民の生活環境との調和も図れるはずです。

民泊サービスの健全な発展のためにも、この制度を正しく理解し、遵守することが何より大切です。本記事が、皆さまの民泊事業運営の一助となれば幸いです。

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