はじめに
外国人が日本で就労するためには、適切な在留資格の取得が必要不可欠です。この在留資格のことを一般に「就労ビザ」と呼んでいます。日本での就労を望む外国人は、自身の状況や職種に合った就労ビザを選択し、所定の手続きを経る必要があります。本記事では、就労ビザの種類や要件、取得手順など、外国人が日本で合法的に就労するための具体的な情報をお届けします。
就労ビザの種類
外国人が日本で合法的に就労するためには、様々な種類の在留資格(就労ビザ)から、自身の状況や職種に合ったものを選択する必要があります。代表的な就労ビザには以下のようなものがあります。
技術・人文知識・国際業務
就労ビザの中でも最も一般的なものが「技術・人文知識・国際業務」の在留資格です。この資格は、外国人の専門性を活かせる様々な業務に従事する場合に取得できます。対象となる職種は多岐にわたり、IT技術者、製造・開発技術者、通訳・翻訳、貿易業務などが含まれます。ただし、それぞれの職種に応じた学歴や実務経験などの要件を満たす必要があります。
例えば、ITエンジニアや技術者など技術職の場合は、専門的な学位や資格、10年以上の実務経験が求められます。また、法務、経理、人事など人文知識業務には学士号以上の学歴と10年以上の経験、通訳・翻訳や語学指導など国際業務には学士号と3年以上の経験が必要とされています。
高度専門職
「高度専門職」の在留資格は、専門性の高い外国人材を受け入れるための制度です。この資格は「高度研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営管理活動」の3つの分野に分類されます。2023年4月から始まった「特別高度人材制度(J-Skip)」により、従来のポイント計算は不要になりました。
J-Skipの具体的な条件は、①修士号以上の学位と年収2000万円以上、②実務経験5年以上と年収2000万円以上、③高度経営管理活動の場合は実務経験5年以上と年収4000万円以上のいずれかとなっています。「高度専門職」の資格を持つと、在留期間の延長や永住権取得の優遇、配偶者の就労許可、親の帯同や家事使用人の雇用など、様々な特典が受けられます。
企業内転勤
「企業内転勤」の在留資格は、外国法人から日本法人への転勤者が対象となります。企業内における高度の専門的知識を必要とする職務、または企業の方針や事業活動を指揮・管理する職務に従事する場合に認められます。転勤者は原則として外国法人で1年以上の勤務経験が必要です。
その他の就労ビザ
その他の主な就労ビザとしては、「技能」「特定活動」「特定技能」「介護」などがあります。「技能」は、産業上の特定の分野で相当程度の知識や経験を必要とする技能を有する人が対象です。「特定活動」はスポーツ指導や報道関係の職種など、「特定技能」は人手不足分野の即戦力を受け入れる制度です。「介護」には、EPA介護福祉士や介護技能実習生など3つのタイプがあります。
就労ビザの取得手順
就労ビザの取得手順は、新規取得か在留資格の変更かによって異なります。新規取得の場合は、まず企業が在留資格認定証明書の交付申請を行います。その後、外国人本人が在外公館でビザを受け取り、入国となります。一方、在留資格変更の場合は、日本国内で本人が手続きを行います。
新規取得の流れ
新規の就労ビザ取得には以下のような手順があります。
- 企業が出入国在留管理局に事前相談を行い、外国人と仕事の適合性を確認する
- 必要書類(申請書、写真、履歴書、学歴証明書、職歴証明書、雇用契約書など)を準備する
- 企業が代理人として在留資格認定証明書交付申請を行う(標準処理期間1〜3か月)
- 在留資格認定証明書が交付されたら、外国人本人が在外公館でビザを申請する
- 通常3か月以内に外国人が日本に入国する
申請には企業規模によって必要書類が異なり、特定技能の場合は技能試験の合格証明書など追加の書類が必要です。また、外国人が入国できる期限があるため、本人の手続きをサポートすることが重要です。
在留資格変更の手順
すでに日本に在留している外国人が就労ビザへの資格変更を希望する場合は、以下の流れとなります。
- 転職や業務内容の変更があり、現在の在留資格が変更となることを認識する
- 新しい在留資格に必要な書類を準備する
- 出入国在留管理局に資格変更の申請を行う
- 新しい在留カードの交付を受ける
学生ビザから就労ビザへの変更や、就職内定後に資格外活動許可を得るためには「特定活動」への一時的な変更手続きが必要になる場合もあります。また、資格変更の申請時期によっては処理に時間がかかるため、早めの準備が肝心です。
申請時の注意点
就労ビザの申請には多くの注意点があります。まず、学歴や実務経験の虚偽申告は不許可のリスクが高く、厳に慎む必要があります。また、職務内容と従事する業務との関連性が求められますので、この点に十分留意しましょう。申請に必要な書類は申請者の経歴に応じて異なるため、事前に確認が欠かせません。
企業側の責務
企業が外国人を雇用する際は、就労ビザの取得手続きを適切にサポートする必要があります。特に、新規申請の際は在留資格認定証明書の交付から外国人本人の入国まで、企業が主体的に関与することになります。
また、就労ビザ取得後も、外国人に従事させる業務が在留資格の範囲内であることを確認する責務があります。さらに、外国人に対して日本人と同等以上の給与を支払う必要があるほか、就労ビザの取り消しに注意を払うなど、様々な点で注意が求められます。
専門家への相談
就労ビザの申請は複雑な手続きが多く、不備があると不許可になる可能性があります。簡単なケースであっても、行政書士など専門家への相談を検討するのが賢明です。
当事務所では在留資格に強い専門家が在籍しており、親切で丁寧な対応が評判となっております。もし知っている行政書士がいないという場合は、ぜひ当事務所へご連絡ください。下記問い合わせフォームからご連絡いただければ、当事務所の行政書士からレスポンスいたします。
まとめ
就労ビザは外国人が日本で合法的に就労するために必要不可欠な在留資格です。職種や経歴によって取得条件が異なるため、自身に合った就労ビザを選び、所定の手続きを経る必要があります。新規取得と在留資格変更では申請の流れが異なることに加え、企業側にも様々な注意点があります。専門家への相談を検討すれば、安心して申請できるでしょう。
本記事が外国人の皆さんの日本での活躍の一助となれば幸いです。