はじめに
民泊ビジネスが注目を集めるなか、住宅宿泊管理業者の登録が重要視されています。住宅宿泊管理業者になるためには、様々な要件を満たす必要があります。本記事では、登録要件について詳しく解説していきます。
個人の登録要件
個人が住宅宿泊管理業者として登録するためには、いくつかの条件があります。
実務経験
住宅の取引や管理に関する2年以上の契約実務の経験が必要です。例えば、不動産会社での営業や管理業務の経験があれば、この要件を満たすことができます。実務経験があれば、専門的な知識や対応力がついているため、適切な管理業務が可能と判断されます。
ただし、経験年数だけでなく、実際に契約業務を行っていたかどうかが重視されます。単なる事務職やアルバイト経験では要件を満たせない可能性があります。
不動産関連資格
次に、不動産関連の資格を持っていることが条件となります。具体的には以下の3つの資格のいずれかが必要です。
- 宅地建物取引士
- 管理業務主任者
- 賃貸不動産経営管理士
これらの資格を持っていれば、不動産の専門知識や管理能力があると判断され、登録要件を満たすことができます。例えば宅地建物取引士であれば、取引に関する法律知識があり、適切な契約締結や管理ができると期待されます。
資格取得には一定の費用と勉強時間が必要となりますが、将来的な住宅宿泊管理業者としてのキャリアを見据えれば、資格取得は有利に働くでしょう。
住宅宿泊管理業実務講習の修了
2023年の省令改正により、実務経験や資格がなくても、「住宅宿泊管理業実務講習」を修了すれば登録要件を満たせるようになりました。この講習は一般社団法人全国農協観光協会が実施しています。
講習は20時間の自主学習と7時間の対面講義・演習から構成されます。受講後に修了試験を受け、80%以上の正答率で合格すれば、修了証明書が発行されます。この修了証明書があれば、経験や資格がなくても住宅宿泊管理業者として登録できるのです。
ただし、修了試験に不合格の場合は再受講が必要となり、受講料の追加支払いが発生します。また、受講態度が悪い場合は受講を中止されるリスクもあります。
法人の登録要件
法人が住宅宿泊管理業者として登録する場合の要件は個人とは異なります。
不動産関連業者の登録
法人の場合、以下のいずれかの登録または免許を受けていることが必要です。
- 宅地建物取引業者の免許
- マンション管理業者の登録
- 賃貸住宅管理業者の登録
これらの登録や免許を受けていれば、不動産に関する専門性や管理能力が認められているため、住宅宿泊管理業の登録要件を満たすことができます。
不動産関連事業を既に行っている企業であれば、住宅宿泊管理業の登録も比較的容易といえるでしょう。一方、新規参入の企業は、まずこれらの登録や免許を取得する必要があります。
従業員の要件
法人の場合も、個人の登録要件を満たす従業員を雇用していることが必要です。具体的には以下のいずれかに該当する従業員を有していなければなりません。
- 住宅の取引または管理に関する契約実務を2年以上経験している者
- 宅地建物取引士の登録を受けている者
- 管理業務主任者の登録を受けている者
- 賃貸不動産経営管理士の登録を受けている者
- 住宅宿泊管理業実務講習を修了した者
このような従業員を確保することで、法人としての管理能力を証明できるためです。特に実務経験者や専門資格保持者の存在が重視されます。
新規参入企業の場合、このような従業員を外部から確保する必要があり、登録までに一定の時間を要する可能性があります。
財務体質の健全性
法人の場合、財務体質の健全性も重要な要件となります。具体的には以下の2点を満たす必要があります。
- 負債の合計額が資産の合計額を超えていないこと
- 支払い不能に陥っていないこと
債務超過状態や支払い不能であれば、民泊施設の適切な管理が困難と判断され、登録が認められません。財務体質が健全であることは重要な判断基準なのです。
新規設立企業の場合は開業貸借対照表の提出が求められ、十分な資本金の存在が確認されます。既存企業は直近の決算書の提出が必要となります。
申請手続き
住宅宿泊管理業者の登録を申請するには、様々な書類の提出が求められます。
必要書類
主な必要書類は以下の通りです。
- 登録申請書
- 誓約書
- 身分証明書
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 定款(法人の場合)
- 決算書一式(法人の場合)
- 資格証明書(資格を有する場合)
- 実務経験を示す書類(実務経験がある場合)
- 財産に関する調書
法人の場合はさらに納税証明書や出資金に関する書類など、様々な書類が求められます。新規設立企業は別途書類の提出が必要となる場合があります。
申請書類の不備があれば補正を求められ、処理に時間を要する可能性があります。事前に十分な準備が重要です。
手数料
申請には手数料の支払いが伴います。具体的な金額は以下の通りです。
- 登録免許税:90,000円
- 更新手数料(5年ごと):19,700円
いずれも国に対する手数料となります。更新の際の手数料も事前に確保しておく必要があります。
なお、既に宅地建物取引業者やマンション管理業者などの登録を受けている場合は、一部の書類が省略できる可能性があります。
申請方法
登録申請は民泊制度ポータルサイトから行うことができます。主たる営業所を管轄する地方整備局に電子申請することが可能です。
標準処理期間は90日程度とされていますが、書類の補正を求められた場合はさらに時間を要することがあります。申請から実際の登録完了までに、3か月程度を見込む必要がありそうです。
登録後の義務
住宅宿泊管理業者として登録を受けた後も、様々な義務が課せられます。
誇大広告の禁止
住宅に関する広告をする際は、誇大な表現を避け、事実に基づいた適正な広告を行わなければなりません。虚偽や誇大な広告を行った場合、登録の取消しや業務の停止命令を受ける可能性があります。
具体的には、民泊のメリットを過度にアピールしすぎたり、施設の環境や付帯設備を実態以上に誇張したりすることは避ける必要があります。
委託者の保護
管理受託契約の締結に際しては、委託者の利益を損なう行為が禁止されています。例えば虚偽の説明をして契約を締結させるなどの行為は許されません。
また、委託者に著しく不利益を与える内容の契約を結ばせてはいけません。公正かつ適正な条件で契約を結ぶことが求められます。
説明義務と書面交付義務
管理受託契約の締結前には、サービス内容や料金などの重要事項について、十分な説明を行わなければなりません。また、契約締結後は、契約内容を記載した書面を交付する義務があります。
説明義務や書面交付義務を怠った場合、委託者から契約の解除を求められる可能性があります。トラブル防止のためにも、丁寧な対応が求められます。
苦情対応体制の整備
登録の要件として、苦情対応のための体制を証明する書類の提出が求められます。登録後は、その体制を実際に整備し、宿泊者や近隣住民からの苦情に適切に対応する必要があります。
例えば、電話やメールでの相談窓口の設置や、苦情処理の手順の明確化などが考えられます。スムーズな苦情処理体制があれば、トラブル解決への対応が適切に行えるでしょう。
まとめ
住宅宿泊管理業者の登録には、個人と法人で条件が異なり、様々な要件を満たす必要があります。経験や資格、財務体質、体制の整備など、多岐にわたるチェックがあります。不動産関連業界で実績があれば、比較的容易に登録できますが、新規参入の場合は書類の準備などに時間を要することが予想されます。
また、一度登録を受けた後も、誇大広告の禁止や苦情対応体制の整備など、様々な義務があることを認識しておく必要があります。適切な業務遂行が求められるため、登録には慎重な準備が欠かせません。
今後も民泊ビジネスの需要は高まるでしょう。住宅宿泊管理業者として登録することで、新たなビジネスチャンスを積極的に捉えることができます。