はじめに
東京の江東区は、民泊ビジネスに関して独自の規制を設けている自治体の一つです。人気観光地に近接しながらも、住環境の保護を重視しているため、民泊の営業には一定の制限があります。本記事では、江東区における民泊ビジネスの実態と、事業者が留意すべき点について詳しく解説します。
江東区の民泊規制
江東区では、住宅宿泊事業法に基づき、区内全域を住宅宿泊事業(民泊)の制限区域に指定しています。この規制により、月曜日の正午から土曜日の正午までは民泊の営業ができません。ただし、国民の祝日に関する法律で定める休日については、この制限の対象外となります。
制限区域の指定理由
江東区が制限区域を指定した理由は、地域の住環境を守るためです。民泊施設の運営に伴う騒音や迷惑行為を防ぐことで、住民の生活の平穏を確保しようとしています。このように、自治体独自の条例によって、民泊ビジネスに対する規制が設けられる場合があります。
また、江東区では、第一種中高層住居専用地域(亀戸二丁目、南砂二丁目、辰巳二丁目など)において、平日の営業を一切禁止しています。こうした上乗せ規制は、住宅地の環境保全を最優先する考え方に基づいています。
事業開始時の手続き
江東区で新たに民泊事業を始める場合、区長への届出が義務付けられています。届出の際には、以下の手続きが必要となります。
- 近隣住民への事前周知と報告
- 住宅宿泊事業届出書の提出
- 事前相談(電話予約制、「江東区住宅宿泊事業の適正な運営に関するガイドライン」の確認が必要)
届出住宅では、台所、浴室、便所、洗面設備の4つの水回りが設けられている必要があります。また、住宅の図面には、これらの設備の位置や間取り、各階の別、居室・宿泊室の床面積を明記する必要があります。
運営上の留意点
民泊事業を適切に運営するためには、さまざまな点に留意が必要です。
- 非常用照明器具の設置
- 防火の区画等の安全措置
- 宿泊者への鍵の受け渡し方法
- 災害対策
特に、宿泊者への鍵の受け渡しについては、フロントがない民泊施設でも対応が求められます。ビデオカメラによる本人確認や、解錠方法の説明など、周辺地域への影響を防ぐための措置が必要不可欠です。
民泊の現状と課題
江東区における民泊ビジネスは、平日の営業制限など厳しい規制がある一方で、立地の良さや魅力的な施設内容が強みとなっています。しかし、近隣トラブルへの配慮も重要な課題です。
民泊物件数の状況
江東区の民泊物件数は、目黒区と同様に他の人気エリアに比べて非常に少ない状況にあります。2024年5月時点で、江東区の民泊物件数は23件にとどまっています。一方、旅館業許可を取得している施設は165軒と、民泊を大きく上回っています。
このように、民泊ビジネスを展開するには一定の障壁があることがわかります。両自治体で宿泊ビジネスを展開する場合、旅館業の取得が現実的な選択肢となる可能性が高いでしょう。
民泊の魅力
江東区には、一軒家を完全に貸し切れる魅力的な民泊施設が存在します。たとえば、「さくら家」は3階建ての一軒家をフルリノベーションした宿泊施設で、最大19名まで宿泊可能です。専門の清掃業者による徹底的な清掃・消毒が行われているため、ハイクラスホテルのような清潔さを堪能できます。
立地的にも恵まれており、都営新宿線大島駅からの徒歩圏内、東京スカイツリーなどの観光地にもアクセスが良好です。ご家族やご友人との東京観光、女子会、企業の出張や研修など、様々な用途で利用できる点が魅力的です。
民泊と近隣トラブル
一方で、民泊事業を行う上での大きな懸念材料は、近隣トラブルの発生です。騒音や迷惑行為が起これば、地域住民との軋轢を生む可能性があります。江東区でも、そうした事態を未然に防ぐため、民泊の営業を一定期間制限しています。
民泊事業者は、宿泊者に対するマナー指導を徹底するとともに、周辺住民への十分な配慮が求められます。マンション管理組合との話し合いを通じて、民泊の可否を管理規約に明文化することも有効な対策です。
民泊ビジネスを支援する制度
民泊ビジネスを円滑に進めるためには、専門家のサポートを活用することが重要です。江東区をはじめ、行政機関や民間団体からさまざまな支援が受けられます。
行政書士によるサポート
民泊許可申請は複雑な手続きが必要なため、行政書士のサポートが欠かせません。申請ALL.comでは、行政書士報酬の見積もりを自動で取得できるWEBサービスを提供しています。迅速かつ正確な対応が可能で、WEB上で簡単に依頼できるのが魅力です。
マンション管理組合への助言
マンション管理規約の見直しは、民泊に関するトラブルを未然に防ぐ重要な対策です。江東区では、専門家からアドバイスを受けられる制度があります。東京都マンション管理士会の「民泊ヘルプライン」では、無料で電話相談を受け付けています。
補助金制度の活用
民泊ビジネスを始める際は、国や自治体の補助金制度を活用することをおすすめします。施設の改修費用や広告宣伝費、衛生管理費などの経費に対して、一定の補助が受けられる可能性があります。
まとめ
江東区における民泊ビジネスは、平日の営業制限など厳しい規制がある一方で、旅行者に人気の立地や魅力的な施設内容が強みとなっています。しかし、近隣トラブルへの配慮が欠かせません。事業者は、法令を順守しつつ、専門家のサポートを活用しながら適切な運営を心がける必要があります。
民泊ビジネスの将来性を検討する際は、江東区の事例を参考にすることをおすすめします。地域の実情に合わせた対策を講じることで、民泊事業を安全かつ継続的に運営できるはずです。
