はじめに
民泊ビジネスは近年急速に成長を遂げており、多くの人々にとって魅力的な投資・副業の選択肢となっています。しかし、民泊を開業する際には、建築基準法をはじめとする様々な法令を遵守する必要があります。本記事では、民泊事業者が理解しておくべき建築基準法の要点について、詳しく解説していきます。
民泊と建築基準法
建築基準法は、建築物の安全性や衛生性を確保するための法律です。民泊事業においても、この法律の規定に従う必要があります。
建物の用途
民泊施設の建築基準法上の用途は、「住宅」、「共同住宅」、「旅館・ホテル」のいずれかとなります。用途によって、適用される基準が異なってきます。
一般的な住宅を民泊施設として利用する場合は、「住宅」または「共同住宅」の用途となり、比較的緩やかな基準が適用されます。一方、旅館やホテルとして利用する場合は、「旅館・ホテル」の用途となり、より厳しい基準を満たす必要があります。
用途変更の手続き
民泊施設の開業にあたり、建物の用途を変更する必要がある場合は、用途変更の手続きが必要となります。用途変更には「用途変更確認申請」が必要で、専門家に相談しながら進めることが重要です。
用途変更の際には、建物の構造や設備が新しい用途に適合しているかどうかが審査されます。例えば、住宅から旅館への用途変更の場合、消防設備の設置や耐火構造への改修が必要になる可能性があります。
用途地域による制限
民泊施設の開業に際しては、用途地域による制限にも注意が必要です。用途地域によっては、民泊の営業が認められない場合があります。
例えば、住居専用地域では、民泊新法に基づく住宅での民泊は可能ですが、旅館業法に基づく旅館やホテルの営業は原則として認められません。事前に自治体の窓口で確認することが重要です。
民泊新法と建築基準法
2018年に施行された「住宅宿泊事業法」(通称:民泊新法)は、民泊事業の適正化を目的とした法律です。この法律では、建築基準法上の取扱いについても規定されています。
住宅扱いと面積規制
民泊新法では、民泊施設は「住宅」として扱われます。そのため、200平方メートルを超える面積での営業であっても、用途変更の手続きは不要となります。
ただし、180日を超える長期の営業には、都道府県知事への届出が必要です。また、宿泊者の安全確保のため、一定の設備基準を満たす必要があります。
住居専用地域での営業可能
民泊新法のメリットの一つは、住居専用地域でも民泊の営業が可能となる点です。旅館業法では住居専用地域での営業は原則として認められませんが、民泊新法では住宅扱いとなるため、制限がかからないのです。
ただし、自治体によっては条例で規制している場合もあるため、事前の確認が重要です。
旅館業法との違い
民泊新法と旅館業法では、建築基準法上の取扱いが異なります。旅館業法では、施設は「旅館・ホテル」の用途となり、200平方メートルを超える場合は用途変更が必要です。また、消防設備や構造基準に関する要件も厳しくなります。
一方、民泊新法では住宅扱いとなるため、比較的柔軟な対応が可能です。ただし、安全性や衛生面での基準は満たす必要があります。
改正建築基準法と民泊
2020年6月に施行された建築基準法の改正により、民泊事業に関する規制が合理化されました。
200平方メートル未満の規制緩和
改正後は、延べ面積200平方メートル未満の建物について、耐火構造の要件が緩和されました。警報設備や防火設備を設置することで、耐火構造への改修が不要になる場合があります。
また、200平方メートル以下の建物については、他用途への転用時の建築確認手続きが不要になりました。これにより、住宅から民泊施設への転用がより容易になったと言えます。
空き家活用の促進
この改正は、空き家の有効活用を後押しするものとなっています。改修費用の削減により、空き家を低コストで民泊施設に転用することが可能になりました。
ただし、建築基準法の他の要件は依然として満たす必要があり、専門家に相談しながら進めることが重要です。
旅館業法との関係
建築基準法の改正は、主に民泊新法の範囲内での民泊事業を対象としています。旅館業法に基づく旅館やホテルの開業については、従来通り厳しい基準が適用されます。
しかし、200平方メートル未満の施設については、一定の規制緩和がなされているため、投資の際の検討材料となるでしょう。
まとめ
民泊事業を行う上で、建築基準法は重要な法令の一つです。用途変更の手続きや、設備基準の遵守など、様々な点で影響があります。民泊新法と旅館業法では、建築基準法上の取扱いが異なるため、事業の形態に合わせて対応する必要があります。
最近の建築基準法の改正により、一定の規制緩和がなされましたが、依然として専門家に相談しながら進めることが肝心です。建築基準法を理解した上で、適切な手続きを踏むことが、安全で適法な民泊事業を実現するための鍵となるでしょう。