はじめに
民泊ビジネスはゲストと自宅を”シェア”するユニークなスタイルのサービスです。多くの人に魅力を感じられていますが、同時に法的な規制の対象にもなっています。適切な許可を得て、適正に運営することが不可欠です。本記事では、民泊を始める際の許可取得と、関連する費用について詳しく解説します。
民泊ビジネスに関する法制度
民泊を適正に運営するには、関係法令を把握しておく必要があります。主要な法制度は以下の3つです。
住宅宿泊事業法(民泊新法)
2018年に施行された住宅宿泊事業法は、民泊の適正な運営を目的とした包括的な法律です。年間180日を超えない範囲での民泊営業を認め、主に以下の規制があります。
- 都道府県知事への届出が義務付けられている
- 一定規模以上は民泊管理業者への委託が必須
- 最低限のゲストの安全対策が求められる
旅館業法
1948年に施行された古くからある法律で、民泊だけでなく旅館やホテル全般を規制対象としています。簡易な宿泊施設を開業する場合はこちらの法律に基づいた許可申請が必要です。
国家戦略特別区域法(特区民泊)
2014年に東京都心の一部地域で先行的に解禁された制度です。上記2法に加えて、さらに大都市圏での民泊解禁の法的根拠となっています。しかし、2018年の民泊新法施行以降は、この特区民泊制度の活用事例は減少しています。
民泊の開業に必要な費用
民泊を始めるには、様々な費用負担が必要になります。主なものとして以下が挙げられます。
届出・許可申請の費用
民泊の形態によって異なりますが、大まかな費用負担は次のようになります。
申請内容 | 主な費用 |
---|---|
住宅宿泊事業届出 | 24万円程度(届出手数料+代行費用) |
簡易宿所営業許可 | 40万円程度(申請費用+申請手数料) |
特区民泊認定申請 | 20万円~30万円程度(地域による差あり) |
自分で手続きを行えばある程度費用を抑えられますが、完全に自力で行うのは困難です。行政書士などの専門業者に一部依頼するのが一般的です。
家具・設備の調達費用
客室に必要な家具や備品、最低限の消防設備など、一定の初期投資が必要になります。中古品の活用や規模に応じた最小限の調達で、ある程度費用を抑えられます。
物件の改修費用
快適な宿泊空間を確保するため、物件の改修工事が必要な場合もあります。用途変更の有無や、物件の状態次第で、数十万円以上の費用がかかる可能性もあります。
民泊運営に関わる継続的な費用
開業後も、様々な継続的な費用負担が発生します。主なものは以下のとおりです。
運営管理の委託費用
宿泊者対応や清掃、予約管理などの業務を外部事業者に委託する場合、委託費用が毎月発生します。物件数に応じた従量課金制が一般的で、月額5万円~10万円程度が目安です。
ホームページ運営費用
独自サイトを持つ場合は、ホームページ作成・運営の費用がかかります。外注した場合、制作費に加えて月額1万円前後の運営費用が必要です。
清掃・メンテナンス費用
宿泊者入れ替え時の清掃費用や、定期的な設備メンテナンス費用が発生します。自前で行えば費用は抑えられますが、ある程度の外注は避けられません。
民泊事業における収支計画
費用をどのように賄うかが重要なポイントです。主な収入源は宿泊料金ですが、事業規模が小さい場合は民泊専用の融資制度を活用するのも一案です。
宿泊料金の設定
周辺の宿泊施設との競合や、立地条件なども考慮しつつ、適切な宿泊料金を設定する必要があります。夜1万円程度が目安ですが、物件の状況次第で変動します。
収支の試算
収入と費用を綿密に積算し、事業計画の策定が不可欠です。月次・年次の収支計画を立て、一定の利益が見込めるよう留意が必要です。赤字が恒常化しないよう、適切なコスト管理も求められます。
融資制度の活用
民泊専用の融資制度もあり、金融機関によっては民泊開業支援ローンなどの商品があります。一定の審査基準をクリアできれば、低金利での資金調達が可能です。
まとめ
民泊ビジネスを始めるには、手続き面と費用面の双方で適切な準備が必要です。事前に収支シミュレーションを行い、開業から運営に至るまでの一連の費用を把握しておくことが重要です。相応の初期投資と継続的な費用負担を覚悟した上で、法令や自治体の条例に従って適正に運営することが求められます。一方で、費用対効果を意識しながら上手にコストを抑えていくことも成功のカギとなるでしょう。適切な投資とコスト管理のバランスを取りながら、質の高い宿泊サービスを提供していくことが肝心です。