【完全解説】旅館業申請費用の全て|行政書士費用から消防設備まで総額を徹底分析

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目次

はじめに

旅館業を開業するためには、様々な手続きと費用が必要になります。旅館業法に基づく営業許可申請は必須であり、この申請には多くの書類作成や関連法令の調査が伴います。近年、民泊ブームの影響で旅館業への関心が高まっていますが、実際に開業するためには相当な初期投資が必要となることを理解しておく必要があります。

本記事では、旅館業の申請に関わる費用について詳しく解説します。申請手数料から行政書士への依頼費用、さらには図面作成費用や消防設備工事費用まで、開業に必要な費用の全体像を把握することで、適切な資金計画を立てることができるでしょう。

旅館業の種類と申請の基本

旅館業は大きく分けて、ホテル・旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業の3つに分類されます。ホテル・旅館営業は一般的なホテルや旅館を指し、簡易宿所営業には民宿やペンション、民泊などが含まれます。下宿営業は長期間の宿泊を前提とした営業形態です。

申請手続きは、施設の所在地を管轄する保健所に申請書を提出することから始まります。審査基準に適合していれば、標準処理期間は13日程度となっています。申請には法人の定款や登記事項証明書、施設の構造設備図面などの添付書類が必要で、これらの書類作成には専門知識が求められます。

申請に必要な書類と準備

旅館業の許可申請には、旅館・ホテル業許可申請書をはじめとする多くの書類が必要です。各種図面(平面図、設備図、求積図、配置図、立面図など)や消防法令適合通知書、さらには近隣の学校等への照会書類なども準備する必要があります。

これらの書類作成には専門的な知識と経験が必要で、多くの事業者は行政書士などの専門家に依頼しています。書類の不備により申請が不受理になるリスクを考慮すると、専門家への依頼は重要な投資と考えられます。また、申請前には必ず各自治体に確認することが重要で、自治体によって要求される書類や手続きが異なる場合があります。

申請プロセスの流れ

旅館業の申請プロセスは、事前相談から営業開始まで8つのステップで進められます。まず事前相談を行い、物件の購入や工事着手前に実施することが推奨されています。次に必要書類の準備と作成、消防署や保健所との調整、申請書の提出と審査、現地検査、そして最終的に営業許可証の交付という流れになります。

全体の審査期間は約2ヶ月程度を要し、この間に様々な調整や追加書類の提出が求められることもあります。特に消防設備や建築基準法への適合確認は重要で、これらの工事や改修が必要な場合は、さらに時間と費用がかかることになります。

申請手数料の詳細

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旅館業の申請手数料は、営業の種類と自治体によって異なります。基本的な手数料体系を理解することで、初期費用の見積もりを正確に行うことができます。ここでは、各種申請における手数料の詳細について解説します。

ホテル・旅館営業の申請手数料

ホテル・旅館営業の新規申請手数料は、自治体によって異なりますが、概ね22,000円から30,000円程度が一般的です。一部の自治体では30,600円という設定もあり、地域による差があることがわかります。これらの手数料は申請時に証紙で支払うことが多く、申請書類の受理時に必要となります。

特に大規模なホテル営業の場合、延べ床面積が300㎡を超える場合は、より高額な手数料が設定されることもあります。また、温泉旅館等の場合は、旅館業法以外にも温泉法、食品衛生法、水質汚濁防止法、公衆浴場法などの複数の法令に基づく許可が必要となるため、それぞれに申請手数料が発生します。

簡易宿所営業の申請手数料

簡易宿所営業の申請手数料は、ホテル・旅館営業よりも安く設定されており、16,000円から16,500円程度が相場となっています。大田区の場合は16,500円、その他の自治体では16,000円程度という設定が多く見られます。民泊やペンション、民宿などを営む場合は、この簡易宿所営業の許可を取得することになります。

ただし、延べ床面積が100㎡を超える場合は、旅館業の申請料金が適用される場合もあります。また、京都市のように独自の条例により、民泊の申請手数料を52,800円と高く設定している自治体もあり、事前の確認が重要です。

地域による手数料の違い

申請手数料は自治体によって大きく異なる場合があります。東京都の一部区(江東区、世田谷区、文京区、新宿区など)や神奈川県、横浜市、川崎市などでは、事前審査等が必要なため、追加で4万円程度の費用が発生する可能性があります。

沖縄県では証紙代として22,000円が設定されており、これは全国的に見ても標準的な水準です。一方で、京都市のように観光地として特別な規制を設けている自治体では、より高額な手数料が設定される傾向があります。申請前には必ず管轄する自治体に確認し、正確な手数料を把握することが重要です。

行政書士への依頼費用

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旅館業の申請は複雑な手続きを伴うため、多くの事業者が行政書士に依頼しています。専門家への依頼費用は決して安くありませんが、申請の確実性や時間短縮を考慮すると、重要な投資と考えられます。ここでは、行政書士への依頼費用について詳しく解説します。

基本的な依頼費用の相場

行政書士への基本的な依頼費用は、申請の種類や規模によって大きく異なります。簡易宿所営業の場合、許可申請代行費用は120,000円から275,000円程度が相場となっています。一方、ホテル・旅館営業の場合は、180,000円から440,000円程度と、より高額な設定となっています。

これらの費用には、申請書類の作成・提出、保健所との調整、現地検査の立会いなどが含まれています。ただし、図面作成や消防設備工事、バリアフリー対応などの追加作業については、別途費用が発生することが一般的です。また、延べ床面積によっても費用が変動し、400㎡を超える大規模な施設の場合は、個別見積もりが必要となります。

事前調査とコンサルティング費用

申請前の事前調査とコンサルティング費用は、50,000円から66,000円程度が相場となっています。この調査では、保健所や消防署、役所との調整を行い、物件の購入や工事着手前に実施することが推奨されています。簡易調査の場合は38,000円程度で、既存資料の範囲内での許可可能性の調査が行われます。

総合調査の場合は66,000円程度で、行政ヒアリングや簡易図面の作成も含め、総合的な調査が実施されます。これらの調査費用は、本申請を依頼する場合には申請費用から差し引かれることが多く、実質的な負担を軽減できます。事前調査を行うことで、申請の成功確率を高め、無駄な投資を避けることができます。

追加サービスと付帯費用

行政書士への依頼には、基本料金以外にも様々な追加サービスや付帯費用が発生します。平面図作成費用は4万円程度、看板設置費用は3万円程度、学校照会費用は3万円程度(2件以上の場合は3万円)が一般的です。これらの費用は、申請に必要な作業として別途請求されることが多くあります。

また、周辺住民への周知や検査立会、消防工事の調整などの追加業務についても、別途費用が発生します。報酬の支払い方法については、半額を着手金として支払い、残額は申請書類受理後に支払うという形式が一般的です。申請書類が不受理になった場合は、全額返金されるサービスを提供している事務所もあります。

図面作成と設計費用

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旅館業の申請には、詳細な図面作成が必要不可欠です。平面図、設備図、求積図、配置図、立面図など、様々な図面が要求され、これらの作成には専門的な知識と技術が必要です。ここでは、図面作成と設計に関わる費用について詳しく解説します。

基本的な図面作成費用

図面作成費用は、図面の種類と複雑さによって大きく異なります。平面図のみの場合は33,000円から55,000円程度が相場となっており、図面一式(平面図、設備図、求積図、配置図、立面図)の場合は110,000円から150,000円程度が必要となります。

ハンション一室程度の簡易宿所の場合は110,000円程度で済むことが多いですが、複雑な建物や大規模な施設の場合は、別途見積もりが必要となります。旅館業申請と同時に図面作成を依頼する場合は、30%の割引が適用される事務所も多く、費用削減につながります。

設計と現地調査費用

図面作成には、現地調査が必要不可欠です。現地調査費用は30,000円程度が相場となっており、この調査に基づいて正確な図面が作成されます。既存建物の転用の場合は、既存図面の復元作業も含まれることが多く、この場合も同様の費用が発生します。

設計費用は150,000円程度が相場で、これには建築基準法や消防法に適合した設計が含まれます。特に用途変更が必要な場合は、建築確認申請も必要となり、さらに費用が発生する可能性があります。複雑な建物や特殊な構造の場合は、別途見積もりが必要となることが一般的です。

図面の種類と要件

旅館業の申請に必要な図面は、各自治体の要求に応じて作成する必要があります。平面図では、客室の配置や共用部分の設計、避難経路の確保などが重要な要素となります。設備図では、給排水設備、電気設備、消防設備などの配置が詳細に記載されます。

求積図では、各室の面積計算や建築面積、延べ床面積の算出が行われます。配置図では、建物の敷地内での位置関係や周辺環境との関係が示されます。立面図では、建物の外観や高さ、周辺建物との関係が表現されます。これらの図面は、すべて法令に適合していることが求められ、専門的な知識が必要となります。

消防設備と工事費用

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旅館業を営むためには、消防法に基づく様々な設備の設置が義務付けられています。これらの消防設備の設置と工事には、相当な費用が必要となります。ここでは、消防設備と工事に関わる費用について詳しく解説します。

必要な消防設備の種類

旅館業に必要な消防設備は、施設の規模や構造によって異なりますが、基本的には自動火災報知設備、消火設備、避難設備、排煙設備などが必要となります。自動火災報知設備では、煙感知器や熱感知器、受信機などの設置が必要で、これらの設備費用は数十万円から数百万円の範囲となります。

消火設備には、消火器、屋内消火栓、スプリンクラー設備などがあり、施設の規模に応じて設置が義務付けられています。避難設備では、避難階段、避難器具、誘導灯、非常用照明などが必要で、これらの設備も相当な費用が必要となります。

工事費用の見積もり

消防設備工事の費用は、施設の規模や構造、既存設備の状況によって大きく異なります。一般的な簡易宿所の場合、消防設備工事費用は100万円から300万円程度が相場となっています。ホテル・旅館営業の場合は、より大規模な設備が必要となるため、500万円から1,000万円以上の費用が発生することもあります。

工事費用には、設備の購入費用、設置工事費用、検査費用、届出費用などが含まれます。また、既存建物を転用する場合は、既存設備の撤去費用や配線工事費用も発生します。これらの費用は、施工業者によって大きく異なるため、複数の業者から見積もりを取ることが重要です。

消防法令適合通知書の取得

旅館業の申請には、消防法令適合通知書の取得が必要です。この通知書は、消防設備が消防法に適合していることを証明するもので、消防署による検査を受けた後に発行されます。通知書の取得には、申請手数料や検査費用が必要となります。

消防法令適合通知書の取得プロセスは、設備の設置工事完了後、消防署への届出、現地検査、通知書の発行という流れになります。この過程で不適合が発見された場合は、追加工事や設備の修正が必要となり、さらに費用が発生することになります。そのため、工事前の十分な打ち合わせと計画が重要です。

総費用の試算と資金計画

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旅館業の開業には、申請費用だけでなく、設備投資や運営費用など、多額の初期投資が必要となります。適切な資金計画を立てるためには、これらの費用を正確に把握し、十分な資金を確保することが重要です。ここでは、総費用の試算と資金計画について詳しく解説します。

営業種別による総費用の比較

旅館業の開業に必要な総費用は、営業の種類によって大きく異なります。簡易宿所営業の場合、申請費用、設備投資、内装費用などを含めて約102万円の初期投資が必要とされています。この中には、申請手数料、行政書士費用、図面作成費用、消防設備工事費用などが含まれています。

ホテル・旅館営業の場合は、より大規模な設備投資が必要となるため、約183万円の初期投資が必要となります。民泊の場合は、比較的小規模な運営が可能なため、約77万2千円の初期投資で開業できるとされています。ただし、これらの金額は基本的な費用であり、立地や規模、設備のグレードによってさらに高額になる可能性があります。

会社設立を含む場合の費用

会社を設立して旅館業を営む場合は、会社設立費用も考慮する必要があります。株式会社の場合、会社設立報酬額50,000円、旅館業許可申請報酬額230,000円、法定費用224,000円で、総額504,000円(税別)が必要となります。

合同会社の場合は、会社設立報酬額50,000円、旅館業許可申請報酬額230,000円、法定費用82,000円で、総額362,000円(税別)となります。会社設立と旅館業許可申請を同時に依頼する場合は、割引サービスを提供している事務所も多く、費用削減につながります。

運営費用と継続的な費用

旅館業の運営には、初期投資だけでなく、継続的な運営費用も必要となります。人件費、光熱費、修繕費、保険料、税金などの固定費に加えて、マーケティング費用、予約システム費用、清掃費用なども発生します。これらの運営費用は、売上に関係なく発生するため、十分な運転資金を確保することが重要です。

また、設備の更新や修繕費用も定期的に発生します。消防設備の点検費用、建物の修繕費用、客室設備の更新費用など、長期的な視点での資金計画が必要となります。特に観光業は季節変動が大きいため、閑散期の運営費用も考慮した資金計画を立てることが成功への鍵となります。

まとめ

旅館業の申請には、多額の費用と複雑な手続きが必要であることがわかりました。申請手数料だけでも22,000円から52,800円程度が必要で、行政書士への依頼費用を含めると、簡易宿所営業で約102万円、ホテル・旅館営業で約183万円の初期投資が必要となります。これらの費用は、申請手数料、行政書士費用、図面作成費用、消防設備工事費用、内装費用などを含んだ総額であり、立地や規模によってさらに高額になる可能性があります。

成功する旅館業の開業のためには、事前の十分な調査と資金計画が不可欠です。申請前に専門家に相談し、正確な費用見積もりを取得することで、無駄な投資を避け、確実な許可取得を目指すことができます。また、初期投資だけでなく、継続的な運営費用も考慮した長期的な資金計画を立てることが、事業の安定的な運営と成功への第一歩となるでしょう。

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