はじめに
近年、中国人の日本への移住が急増しています。その背景には、中国国内の政治的・経済的状況への不満や、より良い生活環境を求める願望があります。日本は地理的に近く、安全で住みやすい国として、中国人の人気が高まっています。本日は、中国人の日本への移住について、さまざまな角度から探っていきます。
中国人の日本移住の背景
中国から日本への移住ラッシュの背景には、様々な要因が関係しています。
政治的な理由
習近平政権の強権的な統治や、言論の自由が制限されていることから、中国の富裕層や知識人の間で、日本への移住を求める動きが高まっています。コロナ禍における中国政府の横暴な対応にも、多くの中国人が失望を感じています。
一例として、ある武漢出身の中国人は、新型コロナウイルス感染症の拡大を経験し、息子の誕生時に大変な状況に置かれました。その後、自分の価値観と仕事の内容に葛藤を感じ、日本への移住を決意しました。日本では自由に自分の考えを発信できるようになり、家族の呼び寄せも検討しています。
経済的な理由
中国では経済格差が拡大しており、中間層の家族にとって、良質な教育環境を求めることが難しくなっています。一方、日本のインターナショナルスクールの学費が割安であることから、子供の教育のために日本に移住する富裕層が増えています。
例えば、東京の港区を中心に、400人以上の中国人ママたちが微信チャットグループを作り、子供の教育について情報交換をしているそうです。
中国人学生を受け入れる日本の学校も増えてきているというニュースが報道されています。他にもなんと生徒の9割が中国人の高校もあるとのニュースも先日目にしました。日本の質の高い教育を受けさせたい中国人が多くなってきているということだと思います。
生活環境への不満
中国の一部の若者たちは、過剰な競争と長時間労働に疲れ果てています。そのため、日本のような働きやすい環境と良好な労働条件を求めて移住を選択する傾向にあります。
上海出身の方は、中国での激しい競争と長時間労働に疲れ、日本の大学院に入学し、IT企業に就職しました。日本での新しい人生を望んでいます。
日本では国民皆保険制度が整っており、外国人であっても健康保険料を納入していれば日本人と同じように本人3割負担で日本の医療を受けることができます。この制度も中国人にとっては日本移住の魅力の一つになっているようです。
日本の中国人受け入れ態勢
中国人の移住者を受け入れるために、日本政府や自治体、企業は様々な取り組みを行っています。
ビザ制度の整備
日本政府は、中国人の起業家や投資家を呼び込むため、「経営・管理」ビザの基準を緩和しています。2024年度にはさらに要件が緩和される見込みで、中国人がこのビザの約半数を占めると予想されています。
東京都ではスタートアップビザと呼ばれる、起業準備のための6か月間の在留資格取得を支援する制度があります。スタートアップビザを取得して来日し、企業の準備が整ったら在留資格「経営・管理」に在留資格変更を行うというものです。
また、一定の要件を満たせば、中国人は永住権（在留資格「永住者」）を取得することができます。2022年末時点で、日本の永住権取得者の国籍別割合で最も多かったのが「中国」で、全体の約36%を占めていました。
地方自治体の取り組み
一部の地方自治体では、中国人移住者の受け入れに積極的です。例えば、沖縄県の糸満市では、2019年半ばから2022年半ばにかけて、中国人登録者数が16%増加しました。地元住民の一部は、裕福な中国人コミュニティーの形成と不動産価格の高騰に危機感を抱いていますが、地域経済への貢献も期待されています。
企業の対応
日本企業でも、中国人材の確保が重要な課題となっています。少子高齢化が進む中、外国人労働者の需要が高まっており、中国人は日本に最も多く在留する外国人グループです。
中国人を雇用する際は、在留資格や手続きを理解しておくことが重要です。また、専門の求人サイトを活用するなど、効率的で効果的な採用活動を行うことが大切とされています。
中国人移住者の日本での生活
日本に移住した中国人は、新しい環境に少しずつ適応しながら、様々な課題にも直面しています。
就職・起業
中国人移住者の間では、通訳・翻訳、観光業、中国企業との取引など、中国語スキルを活かせる職場への就職が人気です。また、起業を選択する人も少なくありません。
例えば、ある中国人の方は中国の準公務員でしたが、「ゼロコロナ」政策の厳しい制限に疲弊し、日本への留学を選びました。将来的には、日本で起業することも視野に入れているようです。
現在「経営・管理」の在留資格の審査は非常に厳しいものとなっています。審査に半年以上かかる場合も多くなっています。中には1年もかかる場合もあります。これは日本に来るために「とりあえず会社を作る」という外国人（特に中国人が多い）が増えているからと言われています。入管庁としては「日本に来たいからとりあえず会社を作っているのか」や「本当に事業を行うのか」を慎重に審査しなければならない状況になっているのだと思います。
言語・文化の違い
日本語の習得や、文化の違いへの対応は、中国人移住者にとって大きな課題の一つです。しかし、日本語能力を高めることで、より良い就職機会が広がります。
中国人従業員の採用にあたっては、日本語能力の確認が重要とされています。資格や検定試験の活用で、求職者の日本語スキルを客観的に評価できるでしょう。
「留学」を取得するためには、日本語能力検定試験（JLPT）のN5レベルの能力が必要です。他にも在留資格を取得するための要件として、明確にJLPTの資格が記載されているものがあります。日本で日常生活を送るためにはN3レベルの日本語能力が必要とされています。
中国人従業員の採用時に限らず、能力の高さを評価基準の重要な要素とすると思います。中国人を含む外国人採用はここに日本語能力を基準にする企業も多くあると思います。上記のように、日本語能力検定試験を基準に検討することが分かりやすいと思います。仮に日本語能力が現時点で乏しいとしても、入社後に手厚く日本語能力を高めるためのサポートを行うことで、優秀な人材がより働きやすく、日本で住みやすくなると思います。例えば日本語学校の夜間コースに通ってもらうことが考えられます。日本語学校の学費は安くないため、福利厚生的に金銭的な補助を出せるとその企業は選ばれやすくなると思います。優秀な人材が入社することは、企業の利益を拡大させることにつながります。「いい会社である」ことが中国人の優秀そうに口コミで広がれば、同レベルの優秀な人材をリファラルで追加採用できる道が生まれる可能性もあります。
地域コミュニティーとの共生
一部の地域では、中国人移住者の増加に伴い、地元住民との軋轢も生じています。例えば、バンコクでは、中国人起業家が不動産市場に殺到し、地元住民の不満が高まっているそうです。
東京においては、池袋や上野周辺に中国人投資家が「本場の中国料理店」を多く出店している傾向が見受けられます。足立区の竹ノ塚に中国人住民が急激に増加しているというニュースもあります。
双方が相互理解を深め、お互いの文化を尊重し合うことが、共生社会の実現に欠かせません。地域コミュニティーとの対話の場を設けることも有効でしょう。
中国からの頭脳流出への懸念
一方で、中国人の日本への移住増加は、中国国内での頭脳流出への懸念も生んでいます。
中国の国力低下の危惧
近年、110万人以上もの中国人が中国を離れています。このような優秀な人材の流出は、中国の経済発展や技術革新の足かせとなる可能性があります。
特に、先端技術の経験とスキルを持つ技術者や、マネジメントクラスの人材の流出は、中国の国力低下につながりかねません。
中国企業への影響
中国企業にとっても、優秀な人材の確保が難しくなる可能性があります。例えば、IT分野では、日本の企業に引き抜かれるケースも少なくありません。
中国企業は、待遇改善や働きやすい環境づくりなどを通じて、優秀な人材の定着を図る必要があるでしょう。
国際関係への影響
中国人の日本への移住増加は、日中関係にも影響を与えかねません。日本側では、中国の頭脳流出を歓迎する一方で、中国側は人材流出に危機感を抱いています。
両国政府は、この問題に適切に対処し、国際関係を損なうことのないよう、互いに配慮する必要があります。
まとめ
中国人の日本への移住は、政治的・経済的な理由から加速しており、今後もこの傾向が続くと予想されます。日本側は、中国人移住者の受け入れ態勢を整備する一方で、中国との関係にも配慮が必要です。また、中国人移住者自身も、日本社会への適応と、故郷との絆を保つことが求められます。移住は、個人や社会に大きな影響を与えるため、相互理解と共生が不可欠となるでしょう。
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