はじめに
民泊事業が急速に普及する中、「180日ルール」は業界にとって大きな課題となっています。2018年に施行された「住宅宿泊事業法」により、民泊の年間営業日数が180日に制限されたのです。この規制は、住宅地域の生活環境を保護し、既存の宿泊業界との公平な競争条件を確保することを目的としています。しかし一方で、民泊事業者にとっては大きな収益機会の制限につながります。そこで本日は、この180日ルールをめぐる状況と対策について、詳しく解説していきます。
180日ルールとは
まずは、180日ルールの概要から確認しましょう。この制度により、民泊事業者は、4月1日正午から翌年4月1日正午までの1年間で、実際にゲストが宿泊した日数を180日までに制限されています。180日を超えて営業すると、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
制定の背景
180日ルールが設けられた背景には、民泊の急激な普及に伴う様々な問題がありました。特に、ホテル業界からは民泊事業者との不公平な競争を危惧する声が上がり、また、住宅地における騒音や治安の悪化などの問題も指摘されていました。このような状況を受け、民泊事業を一定程度規制する必要性が認識されたのです。
一方で、民泊は観光産業の活性化や地域経済への貢献が期待されていました。そこで、完全な規制ではなく、既存事業を阻害しない範囲で民泊を容認する形となりました。結果的に、年間180日の営業期間が上限とされたわけです。
カウント方法
180日の営業日数のカウントは、宿泊者が実際に宿泊した日数を基準に行われます。例えば、1泊2日の宿泊であれば、チェックイン日とチェックアウト日の2日間がカウントされます。また、正午を過ぎた時点で新しい日が開始するとみなされるため、正午を超えてチェックアウトした場合は、その日もカウントに含まれます。
チェックイン | チェックアウト | 宿泊日数 |
---|---|---|
4/1 10:00 | 4/3 11:00 | 3日間 |
5/15 14:00 | 5/16 13:00 | 2日間 |
このように正確にカウントを行い、180日を超えないよう管理することが民泊事業者に求められています。
180日ルールの対策
180日ルールは民泊事業者にとって大きな制約となりますが、収益を確保するための様々な方法があります。ここでは主要な対策について解説します。
特区民泊の活用
特区民泊とは、国家戦略特別区域法に基づき、180日ルールの適用を受けずに民泊を行える制度です。一定の要件を満たせば認可が下りるため、通年での営業が可能になります。ただし、最低2泊3日の宿泊が条件とされているため、短期の宿泊にはなじみません。
特区民泊に切り替えれば180日の制限はなくなりますが、一方で申請手続きが煩雑になるというデメリットもあります。地域や民泊スタイルに合わせて、特区民泊の活用を検討することが重要でしょう。
マンスリーマンションの活用
180日を超えた後の対策としてよく採用されるのが、マンスリーマンションとしての賃貸です。民泊新法は長期の賃貸には適用されないため、月単位の賃貸であればルールを気にせずに営業できます。ただし、短期の宿泊と比べると収益性は下がります。
民泊とマンスリーマンションを組み合わせることで、180日を前後して柔軟に切り替えることができます。例えば、4月から9月までを民泊シーズン、10月から3月をマンスリーシーズンとするなど、効率的な運用が可能です。
レンタルスペースの活用
もう一つの対策として、レンタルスペースとしての活用があります。民泊新法の規制は宿泊に特化した場合にのみ適用されるため、時間単位でスペースを貸し出せば、法の適用外となります。リモートワークスペースとしての需要も高まっているため、有力な選択肢と言えるでしょう。
ただし、レンタルスペースの運営には宿泊とはまた別の準備や対策が必要です。また、法の解釈が難しいケースもあるため、事前に十分なリサーチが欠かせません。
180日の中での収益最大化
180日ルールに適切に対応しつつ、与えられた期間内で収益を最大化することも重要です。ここでは、効率的な運営に向けたポイントを解説します。
立地の選定
収益を最大化するうえで、立地の良し悪しは大きなカギとなります。人気エリアに近いほど高い利用率が期待できますが、一方で家賃などの固定費も高くなる傾向にあります。投資計画を立てる際は、立地とコストのバランスをしっかりと見極める必要があります。
また、民泊の需要は季節によって変動するため、立地に応じたマーケティング戦略の策定も欠かせません。例えば、リゾート地ならゴールデンウィークや夏休みにフォーカスを当て、都市部なら出張や観光に合わせた宣伝を行うなど、柔軟な対応が求められます。
大箱の選択と差別化
収益性向上のためには、需要の多い大箱の物件を選ぶことがポイントになります。複数の寝室とリビングがあり、家族やグループ利用に適したタイプの物件が人気です。一方で、大箱物件は家賃も高額になる傾向があります。
需要が高い反面、大箱物件同士の競争も激しくなっています。そこで重要になるのが、内装やアメニティなどを工夫し、自身の物件の差別化を図ることです。また、SNSの活用などによるマーケティング力の強化も欠かせません。
運用の効率化
民泊の収益性を左右する大きな要因に、運用の効率性があります。清掃や鍵の受け渡し、アメニティの補充など、様々な作業を効率良く行う必要があります。一人で全ての業務を行うのは現実的ではありません。
そこで有力な選択肢となるのが、運用代行サービスの活用です。例えば、MooNでは15%の手数料で運用代行を受け付けています。業務の一部または全てをアウトソースすることで、オーナー側の負担を大幅に軽減できます。自身で直接運用するか、代行サービスを利用するかは、事業規模や運用体制に合わせて適切に判断することが重要です。
まとめ
民泊事業における180日ルールは、ビジネスモデルに大きな影響を与える重要な規制です。しかし、対策をしっかりと講じることで、この制限を乗り越え、安定した収益を上げることが可能です。立地や物件の選定、運用の効率化など、全体的な戦略が重要になってきます。
また、特区民泊やマンスリーマンション、レンタルスペースの活用など、様々な選択肢があることを理解しておく必要があります。民泊事業を成功に導くためには、状況に応じて最善の方策を柔軟に選択することが求められるのです。