はじめに
民泊をはじめたいと考えている人は多いでしょう。民泊は空いている部屋を活用して収入を得ることができる魅力的なビジネスですが、申請手続きが複雑で戸惑う方も多いはずです。本記事では、民泊の申請を自分で行う際の注意点や必要な手順についてわかりやすく解説します。自分で申請することのメリット・デメリットを確認し、申請の種類と要件、具体的な手順、法的規制など、知っておくべき重要な情報を紹介していきます。
自分で民泊申請をする際のメリット・デメリット
民泊の申請を自分で行うかどうかを検討する前に、メリット・デメリットを押さえておきましょう。
メリット
民泊の申請を自分で行うメリットの一つは、費用を大幅に抑えられる点です。業者に依頼すると数十万円の費用がかかりますが、自分でできれば無料か安価で済みます。また、申請書類の作成を通して民泊に関する法律を理解できるため、知識を深められます。さらに、自分のペースで作業が進められ、時間に余裕を持って対応できます。
民泊の申請は大変な作業ですが、自分で行うことで民泊ビジネスへの理解を深められ、後々のトラブル防止にもつながります。
デメリット
一方で、自分で申請を行うデメリットもあります。書類作成が難しく時間がかかる点、法令の解釈に不安がある点、わからないことが出てきた際の対応に困る点などが考えられます。仕事を持っている人は、なかなか時間が取れない可能性もあります。
また、申請を自分で行うと、ミスが発生しやすいデメリットもあります。申請書類の不備や不足があれば、最悪の場合、申請が認められない可能性があります。民泊経営には多額の費用が必要なだけに、十分な注意が求められます。
民泊申請の種類と要件
民泊の申請には、大きく分けて3つの種類があります。申請の種類によって、要件や手続きが異なるため、事前によく確認する必要があります。
簡易宿所許可(旅館業法)
簡易宿所許可は、従来の旅館業法に基づいた許可です。居室数に制限はありませんが、設備面での規制が厳しく、種々の設備を設置する必要があります。宿泊施設としての最低基準を満たす必要があり、許可の取得が難しいのが特徴です。
具体的な要件としては、客室面積や浴室・トイレの設置、消防設備の設置などがあげられます。簡易宿所許可を得れば、年間を通して営業が可能なため、収益性は高くなります。
特区民泊(国家戦略特区)
特区民泊とは、国家戦略特区において認められた民泊の形態です。特区民泊の申請は都道府県に対して行い、簡単な手続きで申請が可能です。一方で、特区ごとに地理的な制限があり、営業期間の制限があるデメリットもあります。
例えば東京都心の特区では1年のうち180日まで営業が可能ですが、それ以外の地域では120日または90日が上限とされています。申請書類としては、住民票や家族関係の書類などの提出が求められます。消防設備に関する要件は緩和されているのが特徴です。
住宅宿泊事業(住宅宿泊事業法)
2018年に施行された住宅宿泊事業法に基づく民泊の形態です。1年のうち180日までの営業が可能で、家主が留守の際には住宅宿泊管理業者による管理が義務付けられています。申請手続きは各自治体に対して行う必要があり、消防設備に関する要件も一定のものが課されます。
申請時には、建物の登記事項や家主、管理業者の情報、設備の詳細を記した住宅宿泊事業届出書の提出が必要になります。旅館業法に比べれば規制は緩やかですが、一定の基準は求められます。
民泊申請の具体的な手順
民泊の申請手順は、申請の種類によって異なりますが、大まかな流れは共通しています。ここでは、一般的な申請の手順をステップごとに解説します。
ステップ1: 物件の確保と事前相談
民泊を始める上で最初のステップは、物件の確保です。一戸建ての場合は所有物件を利用し、マンションの場合は大家さんの承諾を得る必要があります。物件が決まれば、すぐに保健所や消防署に事前相談をしましょう。この段階で、必要な設備や申請に必要な条件を確認できます。
事前相談の際には、建物の詳細な情報を伝えるとともに、民泊の形態(宿泊客の有無など)についても説明しましょう。協力的な対応で、スムーズな相談ができるでしょう。
ステップ2: 必要書類の準備
事前相談で要件が確認できたら、次は必要書類の準備です。主な書類は以下の通りです。
- 住宅宿泊事業届出書
- 登記事項証明書
- 建物の図面
- 不動産番号通知書
- 管理組合規約の写し(マンション)
- 大家さんの承諾書(借家の場合)
これら以外にも、個別の状況に応じて追加で書類が必要になる可能性があります。全ての書類を漏れなく準備することが重要です。
ステップ3: 申請と許可の取得
書類が整ったら、申請窓口(通常は保健所)に提出します。申請内容が審査され、許可が下りれば民泊の営業が可能になります。許可が下りた際には、許可番号の標識を宿泊施設に掲示する必要があります。また、営業に先立ってゲスト受け入れ体制を整える必要もあります。
申請状況によっては、追加で書類の提出が求められたり、ヒアリングを受けたりする可能性もあります。申請から許可取得まで、数週間から数か月を要する場合もあるでしょう。
注意すべき法的規制
民泊の申請を行う際、さまざまな法的規制について理解しておく必要があります。守られなければ重大なトラブルに発展する可能性もあるため、注意が必要です。
設備関係の法規制
設備の種類 | 主な法的規制 |
---|---|
消防設備 | 消防法、建築基準法に基づき設置義務あり |
衛生設備 | 住民宿泊事業法に基づき、シャワー設備や換気設備の設置が必須 |
備品 | 寝具類の備付けが義務付けられている |
消防設備や衛生設備については、法令で細かく設置場所や設置基準が決められています。備品についても、一定の水準を満たす必要があります。これらの設備を整備しないと、民泊としての営業は認められません。
近隣トラブルへの対策
民泊では、宿泊客による騒音や迷惑行為が近隣住民の生活環境を脅かすリスクがあります。そのため、近隣トラブル防止の取り組みが法令で義務付けられています。
一つは宿泊者名簿の作成・保管です。宿泊者の氏名や住所、宿泊期間を記録し、1年間保存する必要があります。また、トラブル発生時に適切な対応ができるよう、連絡体制を整備することも求められます。苦情対応のマニュアル作成や、管理業者との連携体制の構築なども重要でしょう。
まとめ
民泊の申請は、書類の準備や法令の理解を要する難易度の高い作業です。自分で行うメリットとデメリットを見極めた上で、丁寧に取り組む必要があります。申請の種類ごとに要件が異なるため、ステップを一つずつ着実にこなしていくことが大切です。
設備面や近隣トラブル対策など、様々な法的規制にも細心の注意を払いましょう。初めは手間がかかりますが、民泊ビジネスへの深い理解につながり、適切な経営を行えるようになるはずです。民泊を自分で始める際は、本記事を参考にしっかりと下準備をしましょう。