はじめに
国内における人手不足の深刻化に伴い、外国人材の採用が企業にとって重要な課題となっています。優秀な人材の確保、グローバル化への対応、多様性の促進など、外国人採用にはさまざまなメリットがあります。一方で、言語や文化の違い、ビザの取得、受け入れ体制の整備など、注意すべき点も多くあります。本記事では、外国人採用の現状と課題、メリットとデメリット、採用の流れや制度、支援サービスなどについて、詳しく解説していきます。
外国人材採用の背景と現状
日本の少子高齢化が進行する中、労働力人口の減少が大きな課題となっています。このため、外国人材の受け入れが政府の重要施策の一つとなり、企業の外国人採用ニーズが高まっています。実際、外国人労働者数は年々増加し、2022年には過去最高の182万人を記録しました。
外国人材への需要の高まり
人手不足が深刻な業種や地域を中心に、外国人材への需要が高まっています。介護や建設、製造業などでは構造的な人手不足が続いており、外国人労働者への期待が大きくなっています。また、グローバル展開する企業や海外進出を検討している企業でも、外国人材の確保が重要な課題となっています。
さらに、介護や建設業では特定技能制度の導入により、技能実習を経た外国人材の受け入れが可能になりました。これに伴い、特定技能外国人の採用に積極的な企業も増えています。
企業の外国人採用への取り組み
大手企業を中心に、外国人採用に対する取り組みが進められています。味の素、ホンダ、ファミリーマート、NTTコミュニケーションズなどは、外国人従業員の比率を高め、留学生の採用や日本語研修、メンター制度の導入など、外国人が働きやすい環境づくりに努めています。
一方で、中小企業の間では外国人採用に二の足を踏む傾向もあります。特定技能制度の導入にも関わらず、多くの企業が外国人採用に消極的な状況です。
外国人材採用のメリットとデメリット
外国人材の採用には、企業にとってさまざまなメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットもあります。企業は外国人採用を検討する際、これらのメリット・デメリットを十分に理解しておく必要があります。
外国人材採用のメリット
外国人材の採用には、以下のようなメリットが期待できます。
- 優秀な人材の確保
- 企業の活性化と新しいアイデアの創出
- グローバル化への対応と海外進出の足がかり
- 多言語対応による顧客サービス向上
- 助成金の活用による採用コストの削減
特に、グローバルに事業を展開する企業にとっては、外国人材の確保は必須の課題となっています。外国人社員のグローバルマインドセットと語学力は、海外ビジネスの推進に大きな力となります。
外国人材採用のデメリット
一方で、外国人材の採用には以下のようなデメリットも存在します。
- 言語や文化の違いからくるコミュニケーション課題
- 就労ビザの取得や在留資格の問題
- 外国人向けの受け入れ体制整備の必要性
- 定着率の課題
特に中小企業では、外国人材の受け入れに不安を抱えており、手続きの煩雑さや高いコストが障壁となっています。企業は外国人採用に際し、このようなデメリットへの対応が求められます。
外国人材採用の流れと制度
外国人材の採用には様々な制度やルールがあり、一定の手続きを踏む必要があります。企業は採用の流れと制度を理解した上で、適切に対応することが重要です。
在留資格と就労可能範囲の確認
外国人の方の就労可能な範囲は、保持する在留資格によって異なります。「永住者」や「日本人の配偶者等」の資格では職種や業種に制限がありませんが、「技術・人文知識・国際業務」や「技能実習」などは一定の範囲に限定されます。また、「文化活動」「留学」「家族滞在」では、原則として就労は認められていません。
このように在留資格によって就労可能範囲が異なるため、外国人を採用する際は、事前にその方の在留資格と採用予定の業務内容が合致しているかを確認する必要があります。
就労ビザの取得支援
在留資格が就労を認めていない場合は、就労ビザの取得が必要になります。この手続きは煩雑で時間もかかるため、企業による支援が不可欠です。例えば、日本での就職活動中の外国人に対して「特定活動」の在留資格を提案するなど、企業と外国人双方の損失を最小限に抑える工夫が求められます。
外国人雇用の届出義務
外国人労働者を雇用する事業主には、外国人の雇い入れや離職時に、ハローワークへの届出が義務付けられています。また、外国人労働者の適正な雇用管理が求められ、違法な雇用は企業にも罰則が科される可能性があります。
外国人材採用の課題と対策
外国人材の採用には、言語の壁や文化の違いなど、さまざまな課題があります。企業はこれらの課題を認識し、適切な対策を講じることが重要です。
コミュニケーションとフォロー体制の確立
外国人社員とのコミュニケーションでは、言語の壁や文化の違いから誤解が生じる可能性があります。企業は、外国人社員の日本語レベルに合わせたきめ細かい指導や、通訳の配置など、丁寧なフォローが求められます。
また、外国人社員の定着を図るためには、現場でのコミュニケーションはもちろん、社会保険や住居、銀行口座などの生活支援体制を整備することも重要です。
外国人材の待遇とキャリア形成支援
外国人材の待遇については、日本人社員と同等の処遇が義務付けられています。単に安価な労働力として扱うのではなく、適正な賃金水準での採用と、公正な評価・昇給が必要不可欠です。
さらに、外国人材のキャリア形成支援にも注力する必要があります。日本語研修や技術・ビジネススキルの向上支援などを通じ、外国人社員の長期的な活躍を後押しすることが重要です。
外国人材採用の支援サービス
外国人材の採用には、在留資格の確認や手続きの煩雑さ、言語の壁など、さまざまな課題があります。このため、多くの企業が外国人材の採用支援サービスを活用しています。
外国人人材紹介サービス
企業の外国人採用をサポートする、人材紹介サービスが数多く存在します。Mannet、GOWELL、外国人求人ネットACEなどの大手企業や、特定の国や業界に特化した会社があり、企業のニーズに合わせて選択できます。
これらのサービスでは、事前面接を経た優秀な外国人人材の紹介に加え、採用から定着までの各種サポートが提供されています。特に中小企業にとっては、手続きのノウハウがない分、こうしたサポートは大きな助けとなります。
サービス名 | 特徴 |
---|---|
Mannet | 100カ国2万人超の外国人人材データベース保有 |
GOWELL | 外国人向け採用カフェの運営 |
外国人求人ネットACE | 137カ国6万人超の登録者から紹介 |
外国人向けメディア
求人情報や生活支援サービスを提供する外国人向けのメディアも登場しています。YORO JAPANなどのサイトでは、企業の求人案内のほか、日本での生活に役立つ情報が掲載されており、外国人材の確保と定着の両面で活用できます。
まとめ
本記事では、外国人材採用の背景と現状、メリット・デメリット、採用の流れと制度、課題と対策、支援サービスなどについて解説しました。日本の人口減少に伴い、外国人材の確保はますます重要になってきています。企業は外国人採用のメリットを最大限に活かしつつ、言語や文化の違いなどの課題にも適切に対応することが求められます。外国人材の待遇と定着支援にも力を入れ、長期的な活躍を後押しすることで、外国人材の力を最大限に生かせるでしょう。