在留資格「技術・人文知識・国際業務」における単純労働の考え方(入社時研修含む)

東京都大田区上池台の行政書士 岩崎 達也 です。
多くのホワイトカラー労働者が「技術・人文知識・国際業務」いわゆる「技人国」で日本に在留されていることかと思います。果たしてこの「技人国」ではどんな仕事ができるのか?
もしかしたら皆様はあまり意識されないままお過ごしかもしれません。
また、「技人国」で在留している外国人労働者を雇用している企業、人事・総務担当者の皆様におかれましても、何をしてもらうと大丈夫で、何をしてもらうと法律違反になるのか・・・。
入管法違反は重い罰則がありますので、かなり難しい問題になっています。今回は「技人国」では原則認められていない単純労働に関して、例外的に認められる範囲を解説していきたいと思います。
在留資格認定証明書(CoE)を申請する際にご参考ください。

目次

「技人国」における就労可能な業務内容

技人国においてはいわゆるホワイトカラー的な業務内容を基に、在留資格が許可されます。
大学や同等の教育(短大、専修学校の専門課程など)を受けていて、学んできた分野(自然科学又は人文科学)に関連することが業務内容となります。
詳しくは別記事にまとめておりますので、そちらをご参考いただければと思います。
つまり、単純労働は原則的に許可されないということを意味します。
では、採用後に単純労働を含む実務研修(工場におけるライン作業を研修の一環として一定期間行う など)を行う企業はどのように対応すればよいのでしょうか。
次項以降で具体例とともに説明していきます。

「技人国」の在留資格申請における許可事例と不許可事例

出入国在留管理庁が公表している「ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について」より、「技人国」における許可事例と不許可事例の例示がありますので以下に引用します。
今回のテーマである単純労働のポイントには太字とマーカーを引いてみましたのでご参考ください。

≪許可事例≫
① 本国において大学の観光学科を卒業した者が、外国人観光客が多く利用する本邦のホテルとの契約に基づき、月額約22万円の報酬を受けて、外国語を用いたフロント業務、外国人観光客担当としてのホテル内の施設案内業務等に従事するもの
② 本国において大学を卒業した者が、本国からの観光客が多く利用する本邦の旅館との契約に基づき、月額約20万円の報酬を受けて、集客拡大のための本国旅行会社との交渉に当たっての通訳・翻訳業務、従業員に対する外国語指導の業務等に従事するもの
③ 本邦において経済学を専攻して大学を卒業した者が、本邦の空港に隣接するホテルとの契約に基づき、月額約25万円の報酬を受けて、集客拡大のためのマーケティングリサーチ、外国人観光客向けの宣伝媒体(ホームページなど)作成などの広報業務等に従事するもの
④ 本邦において経営学を専攻して大学を卒業した者が、外国人観光客が多く利用する本邦のホテルとの契約に基づき総合職(幹部候補生)として採用された後、2か月間の座学を中心とした研修及び4か月間のフロントやレストランでの接客研修を経て、月額約30万円の報酬を受けて外国語を用いたフロント業務、外国人観光客からの要望対応、宿泊プランの企画立案業務等に従事するもの
⑤ 本邦の専門学校において日本語の翻訳・通訳コースを専攻して卒業し、専門士の称号を付与された者が、外国人観光客が多く利用する本邦の旅館において月額約20万円の報酬を受けて、フロントでの外国語を用いた案内、外国語版ホームペ-ジの作成、館内案内の多言語表示への対応のための翻訳等の業務等に従事するもの
⑥ 本邦の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務を専攻し、専門士の称号を付与された者が、宿泊客の多くを外国人が占めているホテルにおいて、修得した知識を活かしてのフロント業務や、宿泊プランの企画立案等の業務に従事するもの
⑦ 海外のホテル・レストランにおいてマネジメント業務に10年間従事していた者が、国際的に知名度の高い本邦のホテルとの契約に基づき、月額60万円の報酬を受けてレストランのコンセプトデザイン、宣伝・広報に係る業務に従事するもの


≪不許可事例≫
① 本国で経済学を専攻して大学を卒業した者が、本邦のホテルに採用されるとして申請があったが、従事する予定の業務に係る詳細な資料の提出を求めたところ、主たる業務が宿泊客の荷物の運搬及び客室の清掃業務であり、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となったもの
② 本国で日本語学を専攻して大学を卒業した者が、本邦の旅館において、外国人宿泊客の通訳業務を行うとして申請があったが、当該旅館の外国人宿泊客の大半が使用する言語は申請人の母国語と異なっており、申請人が母国語を用いて行う業務に十分な業務量があるとは認められないことから不許可となったもの
③ 本邦で商学を専攻して大学を卒業した者が、新規に設立された本邦のホテルに採用されるとして申請があったが、 従事しようとする業務の内容が、駐車誘導、レストランにおける料理の配膳・片付けであったことから、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となったもの
④ 本邦で法学を専攻して大学を卒業した者が、本邦の旅館との契約に基づき月額約15万円の報酬を受けて、フロントでの外国語を用いた予約対応や外国人宿泊客の館内案内等の業務を行うとして申請があったが、申請人と同時期に採用され、同種の業務を行う日本人従業員の報酬が月額約20万円であることが判明し、額が異なることについて合理的な理由も認められなかったことから、報酬について日本人が従事する場合と同等額以上と認められず不許可となったもの
⑤ 本邦の専門学校において服飾デザイン学科を卒業し、専門士の称号を付与された者が、本邦の旅館との契約に基づき、フロントでの受付業務を行うとして申請があったが、専門学校における専攻科目と従事しようとする業務との間に関連性が認められないことから不許可となったもの
⑥ 本邦の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務等を専攻し、専門士の称号を付与された者が、本邦のホテルとの契約に基づき、フロント業務を行うとして申請があったが、提出された資料から採用後最初の2年間は実務研修として専らレストランでの配膳や客室の清掃に従事する予定であることが判明したところ、これらの「技術・人文知識・国際業務」の在留資格には該当しない業務が在留期間の大半を占めることとなるため不許可となったもの

https://www.moj.go.jp/isa/content/001343662.pdf

許可事例と不許可事例から見る、採用後研修における単純労働の考え方

許可事例の④と不許可事例の⑥に採用後の研修に関する記述があります。

本邦において経営学を専攻して大学を卒業した者が、外国人観光客が多く利用する本邦のホテルとの契約に基づき総合職(幹部候補生)として採用された後、2か月間の座学を中心とした研修及び4か月間のフロントやレストランでの接客研修を経て、月額約30万円の報酬を受けて外国語を用いたフロント業務、外国人観光客からの要望対応、宿泊プランの企画立案業務等に従事するもの

⑥ 本邦の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務等を専攻し、専門士の称号を付与された者が、本邦のホテルとの契約に基づき、フロント業務を行うとして申請があったが、提出された資料から採用後最初の2年間は実務研修として専らレストランでの配膳や客室の清掃に従事する予定であることが判明したところ、これらの「技術・人文知識・国際業務」の在留資格には該当しない業務が在留期間の大半を占めることとなるため不許可となったもの

許可事例④では採用後の研修期間は6か月となっていますが、不許可事例⑥においては2か年です。
入管庁としては6か月はOK、2年間だと長すぎるという見解を示していると考えられます。
在留資格が1年の方にとっては在留期間のすべてが研修(という名の単純労働)となってしまいます。
確かにこれでは在留資格該当性を満たしているとは言えません。
しかし、例示されているものから、6か月であれば適正な採用後研修の期間であると考えても差し支えないでしょう。
但し大原則として技人国では単純労働は不可ですので、単純労働を伴う採用後研修がある場合、在留資格申請時には審査官に対して書面による十分な説明が必要です。
なお、採用後の実務研修が行われる場合は、引き続き単純労働に従事させていないかなど適切な技人国の業務に従事しているかを確認するため、在留期間は原則1年での許可になります。

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