在留資格「技能」における在留資格申請の要件

東京都大田区上池台の行政書士 岩崎 達也 です。
令和3年(2021年)末の在留資格(在留ビザ)「技能」で日本に在留している外国人は38,240人で、前年末と比較すると5.8ポイントのマイナスでした。コロナ禍以前は「技能」の在留資格者は漸増している状況を鑑みると、やはり新型コロナウイルスによる入国者減の影響が大きいと思われます。また、国籍別数を見てみると、中国籍が15,437名、次いでネパール国籍が12,112名、インド国籍が5,379名、タイ国籍が1,140名の順となっています。令和3年における「技能」の在留資格認定証明書(CoE)の取得人数は2,179名でした。ネパール国籍が584名、インド国籍が407名、中国籍が397名、ポルトガル国籍が190名となっています。では「技能」を取得するために必要な要件について確認していきましょう。

目次

「技能」の在留資格該当性

まずは「技能」の在留資格該当性について確認します。出入国在留管理庁のサイトによる本邦において行うことができる活動を引用します。

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動

https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/qaq5.html

該当例として「外国料理の調理師,スポーツ指導者,航空機の操縦者,貴金属等の加工職人等」が挙げられています。在留期間は5年、3年、1年又は3か月のいずれかで許可されます。
在留資格該当性(本邦において行うことができる活動)について分解して解説していきます。

本邦の公私の機関との契約に基づいて

これは「技人国」での解説と同じく、日本国内の企業等と雇用契約、業務委託契約等を締結している必要があります。これは法人のみならず、個人事業主に雇われることでも要件を満たします。

産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務

上陸基準省令に明示された職種が対象となります。これは外国に特有な産業分野(上陸基準省令第1号から3号まで)、和賀国の水準よりも外国の技能レベルが高い産業分野(上陸基準省令第4号、5号、8号及び9号)及び我が国において従事する技能者が少数しか存在しない産業分野(第6号及び7号)となります。上陸基準省令に明示されていない職種については「技能」での許可ではなく、他の在留資格での許可を目指した方がよいでしょう。

「技人国」との関係

「技術・人文知識・国際業務」と「技能」のどちらで在留資格取得を目指せばよいか、違いはどこにあるのか。初めての資格申請時(「留学」等からの変更申請なども)など分からないことがあると思います。明確な区別は以下の通りです。

「技術・人文知識・国際業務」:一定事項について学術上の素養等の条件を含めて理論を実際に応用して処理する能力

「技能」:一定事項について主として個人が自己の経験の集積によって有している能力

「技人国」では学歴(に伴う自然科学又は人文科学に関する知識)要件がありましたが、「技能」では学歴ではなく個人の経験が問われます

「技能」の上陸許可基準適合性|報酬要件

「技能」の上陸許可基準適合性については、大きく分けて2点あります。
ひとつめは報酬要件です。

日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること

こちらも「技人国」と同じ要件ですね。実務的には外国人調理師の場合、「技人国」よりもやや低い報酬額でも許可されることがあるようですが(同業種間での相対的な判断となるためです。)、その場合家族を扶養する報酬としては低額と判断され、帯同家族に「家族滞在」ビザの許可がおりない可能性について留意するようにしてください

「技能」の上陸許可基準適合性|活動要件

次に上陸許可基準適合性のふたつめに関して記載していきます。
ふたつめは日本国内において予定する活動に関する要件です。
活動に関する要件については第1号から第9号までの9つありますので、ひとつずつ見ていきましょう。

「技能」の上陸許可基準適合性|料理人

一 料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する者で、次のいずれかに該当するもの(第九号に掲げる者を除く。)
イ 当該技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において当該料理の調理又は食品の製造に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者
ロ 経済上の連携に関する日本国とタイ王国との間の協定附属書七第一部A第五節1(c)の規定の適用を受ける者

中国料理、フランス料理、インド料理等のシェフ・コックや、パティシエなどが該当します。実務経験は10年以上の経験が必要ですが、この実務経験の期間には当該料理の調理や食品製造に係る科目を専攻して教育を受けた期間が含まれます。
タイ料理については日タイEPAにより要件が少し異なります。タイ料理人については以下3点の要件を満たしていることが必要です。

①実務経験が5年以上であること(タイ料理人としての資格証明書取得のために教育機関において教育を受けていた期間を含む)
②初級以上のタイ料理人としての技能水準に関する証明書を取得していること
③日本への入国及び一時的な滞在に係る申請を行った日の直前の一年の期間に、タイにおいてタイ料理人として妥当な額の報酬(タイ国内の全産業における平均賃金額を超える報酬又はこれに相当するもので現金によるものに限ります。)を受けており、又は受けていたことがあること。

「技能」の上陸許可基準適合性|建築・土木技術者

二 外国に特有の建築又は土木に係る技能について十年(当該技能を要する業務に十年以上の実務経験を有する外国人の指揮監督を受けて従事する者の場合にあっては、五年)以上の実務経験(外国の教育機関において当該建築又は土木に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

外国に特有の建築又は土木に係る技能とは我が国にはない建築、土木に関する技能を言います。これには枠組壁工法や輸入石材による直接貼り付け工法なども含まれます。
枠組壁工法による輸入住宅の建設に従事することを目的とする外国人技能者については追加で次の要件を満たす必要があります。

①外国人技能者の受け入れ目的が単に建設作業に従事させるためではなく、日本人技能者に対する指導及び技術移転を含むことが明確になっていること。
②住宅建設に必要な資材(ランバー)の主たる輸入相手国の国籍を有する者又は当該国の永住資格を有する者であること。
③受入企業において輸入住宅の建設に係る具体的計画が明示されており、その計画の遂行に必要な滞在期間があらかじめ申告されていること。
④外国人技能者が従事する分野としては、スーパーバイザー、フレーマー、ドライウォーラー、フィニッシュ・カーペンターのいずれかに属するものであって、日本人技能者でも作業が容易であるような工程に携わるものではないこと。

「技能」の上陸許可基準適合性|外国に特有の製品に係る職人

三 外国に特有の製品の製造又は修理に係る技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において当該製品の製造又は修理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

ヨーロッパ特有のガラス製品、ペルシアじゅうたんなど、わが国にはない製品の製造または修理に係る技能です。シューフィッター(生理学的分野から靴を研究し、治療靴を製造するもの)については、解剖学、外科学等の知識を用いて外反母趾等の疾病の予防矯正効果のある靴のデザインを考え、制作していく作業に従事するものはこれに含まれます。

「技能」の上陸許可基準適合性|宝石、貴金属又は毛皮の加工

四 宝石、貴金属又は毛皮の加工に係る技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において当該加工に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

宝石及び毛皮については、宝石や毛皮を用いて製品を作る過程のみならず、原石や動物から宝石や毛皮を作る過程を含みます。

「技能」の上陸許可基準適合性|動物の調教

五 動物の調教に係る技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において動物の調教に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

動物の調教等について特定の国においては教育期間中もこれに従事することが通常であることがあり、このような場合は総則の規定にかかわらず実務経験として差し支えありません。

「技能」の上陸許可基準適合性|掘削

六 石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

地熱開発のための採掘とは、生産井(地熱発電に使用する蒸気を誘導するために採掘された井戸)及び還元井(発電に使用した蒸気及び熱水を地下に戻すために採掘された井戸)を採掘する作業をいいます。

「技能」の上陸許可基準適合性|操縦士

七 航空機の操縦に係る技能について二百五十時間以上の飛行経歴を有する者で、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第十八項に規定する航空運送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦者としての業務に従事するもの

機長又は副操縦士として業務に従事できる技能証明を所持する者であっても、250時間以上の飛行経歴を有しない者については「技能」に関する基準に適合しません。
操縦者として業務に従事するとは、定期運送用操縦士、事業用操縦士又は準定期運送用操縦士のいずれかの技能証明を有し、機長又は副操縦士として業務に従事するものをいいます。
必要とされる飛行経歴は副操縦士として航空運送事業の用に供する航空機の操縦を行うことのできる資格である「事業用操縦士」及び航空機の種類ごとに限定されている「計器飛行証明」を取得するのに必要な飛行経歴が250時間以上であることによります。
「準定期運送用操縦士」は、2人操縦機の副操縦士に特化した技能証明として2012年4月1日に導入されたものであり、同証明自体は240時間以上の飛行訓練により取得が可能です。
なお、航空運送事業とは、他人の需要に応じ航空機を使用して有償で旅客又は貨物を運送する事業をいいます。
国内線外国人操縦士の場合で、本邦の機関から報酬が支払われず、海外のパイロット派遣元会社から支給されるものであっても、本邦の公私の機関との契約があれば要件に該当します。

「技能」の上陸許可基準適合性|スポーツ指導者

八 スポーツの指導に係る技能について三年以上の実務経験(外国の教育機関において当該スポーツの指導に係る科目を専攻した期間及び報酬を受けて当該スポーツに従事していた期間を含む。)を有する者若しくはこれに準ずる者として法務大臣が告示をもって定める者で、当該技能を要する業務に従事するもの又はスポーツの選手としてオリンピック大会、世界選手権大会その他の国際的な競技会に出場したことがある者で、当該スポーツの指導に係る技能を要する業務に従事するもの

スポーツとは、運動競技及び身体運動であって、心身の健全な発達を図るためにされるものをいい、一般的に競技スポーツと生涯スポーツの2種類の概念に分けられます。「技能」におけるスポーツは、この両方が含まれます。
「これに準ずる者として法務大臣が告示をもって定める者」とは、国際スキー教師連盟(ISIA)が発行するISIAカードの交付を受けた者が該当します。
「報酬を受けて当該スポーツに従事していた」とは、プロスポーツの競技団体に所属し、プロスポーツ選手として報酬(賞金を含みます。)を受けていた者が該当します。
「その他国際的な競技会」とは、地域又は大陸規模の総合競技会(アジア大会等)、競技別の地域又は大陸規模の競技会(アジアカップサッカー等)が該当します。
但し、2国間又は特定国間の親善競技会等は含まれません。
野球、サッカーなどチームで必要とするプロスポーツの監督、コーチ等でチームと一体として出場しプロスポーツの選手に随伴して入国し在留する活動については「興行」の在留資格に該当します
「気功」については、体操のように動くことを通じて気を動かし若しくは整え、呼吸によって気を動かし若しくは整える等により肉体的鍛錬を目的とするものと、患部の治療に当たる「気功治療」の2種類があるといわれます。
肉体的鍛錬としての気功運動は、「生涯スポーツ」の概念に含まれると解されますので、スポーツの指導に係る「技能」に該当します。なお、病気治療としての「気功治療」はスポーツの指導には当たりません。

「技能」の上陸許可基準適合性|ソムリエ

九 ぶどう酒の品質の鑑定、評価及び保持並びにぶどう酒の提供(以下「ワイン鑑定等」という。)に係る技能について五年以上の実務経験(外国の教育機関においてワイン鑑定等に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する次のいずれかに該当する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
イ ワイン鑑定等に係る技能に関する国際的な規模で開催される競技会(以下「国際ソムリエコンクール」という。)において優秀な成績を収めたことがある者
ロ 国際ソムリエコンクール(出場者が一国につき一名に制限されているものに限る。)に出場したことがある者
ハ ワイン鑑定等に係る技能に関して国(外国を含む。)若しくは地方公共団体(外国の地方公共団体を含む。)又はこれらに準ずる公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めるものを有する者

「ぶどう酒の品質の鑑定、評価及び保持並びにぶどう酒の提供に係る技能」とは、これらすべての技能を有するものであることを要し、従事しようとする業務については、それらのうちのいずれかの業務を行うものであればよいとされています。
ソムリエは、テイスティングのみならず、ワイン選定、仕入れ、保管、販売、管理等ワインに係る幅広い業務を行うものであることから、申請人と契約する本邦の公私の機関において、これらの内容の飲食関連事業を行っているか否かを判断します。
また、小規模の事業所であってもソムリエを必要とする事業を行う事業所もありますので、事業所の規模のみをもってソムリエの技能を十分に発揮できるか否かの判断は行われません。
さらに、飲食店舗にあっては、ソムリエ以外に食器洗い、給仕、会計等の専従の従業員が確保されていることが必要です。
「国際ソムリエコンクール」(出場者が一国につき一名に制限されているものに限ります。)に当たるものとしては、国際ソムリエ協会が主催する「世界最優秀ソムリエコンクール」があります。
「優秀な成績を収めたことがある者」とは、国際ソムリエコンクールにおいて入賞以上の賞を獲得した者です。

さいごに

ここまで技能における「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」について確認してきました。
この2点を満たしているかどうかが申請の肝になりますが、この2点を満たしていたとしても必ず許可が下りるわけではありません。ここが在留資格(在留VISA)の難しいところです。
入管庁(法務省)には審査における裁量がありますので、どのような書類を提出するかによって、許可が下りたり下りなかったり、はたまた1年更新(在留期間が1年)になったり3年更新になったり・・・。
入管庁のサイトに提出すべき書類の一覧が記載されています。
書類の内容を補強するために理由書を作成する必要があるかもしれません(ただし嘘はいけません必ずバレますし、罰則があります。それだけではなく、将来的に永住や帰化を狙う場合に、嘘を申告した事実が重くのしかかります)。
この理由書に、必要書類内で表現しきれなかった内容や審査官にぜひ伝えておくべき内容を盛り込むことができます。
入管での審査は書面審査ですので、提出する書類がすべてを左右します。
「理由書の書き方が分からない」などは当事務所にてサポートさせていただきます(作成にあたり事前面談が必要です)。

当事務所では在留資格申請、在留期間更新などの申請サポートを行っています。
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