「技術・人文知識・国際業務」の要件について詳しく解説!

東京都大田区上池台の行政書士 岩崎 達也 です。
今回は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格(在留ビザ)を取得するための要件について詳しく見ていきたいと思います。いわゆるホワイトカラーの方々が対象となる在留資格となります。
出入国在留管理庁によると令和3年6月時点での「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で日本に住む外国人の方は283,259人で、前年(令和2年)と比較すると約5,000人減、令和元年と令和2年では3万人強の増加でした。令和2年→令和3年の人数推移は新型コロナウイルスの影響がうかがえます。2022年10月11日よりコロナ禍による入国制限がほぼ平常に戻りましたので、これからは「技術・人文知識・国際業務」での在留人数はより一層増えていくことでしょう。
本記事では技術・人文知識・国際業務における「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」の2点を解説しています。

目次

技術・人文知識・国際業務の在留資格該当性

技術・人文知識・国際業務は家族帯同可能

まずは「技術・人文知識・国際業務」の在留資格該当性について確認していきましょう。
出入国在留管理庁の当該在留資格のページに詳細が記載されているので紹介します。

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(入管法別表第一の一の表の教授、芸術、報道の項に掲げる活動、二の表の経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤、介護、興行の項に掲げる活動を除く。)

該当例としては、機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者等。

https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/gijinkoku.html

おそらく一度読んだだけでは想像がつかないと思いますのでひとつずつ確認していきましょう。
この在留資格該当性については3つに分解して説明していきます。

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う

「本邦の」とありますので、日本に拠点を置いていることがひとつ目の条件となります
「公私の機関」はいわゆる民間の会社に限らず国、地方公共団体や独立行政法人なども可能です。
日本国内に拠点を置いていれば外国の法人や国であっても要件を満たします。
法人でなく個人であっても日本国内に拠点を置いていれば同様です。
また、「契約に基づいて」とのことですので、当該外国人を受け入れる場合、雇用契約や業務委託契約などの締結が必要です。
中長期の在留が予定されると思いますので、契約は単発のようなものではなく継続的なものが望ましいでしょう。

理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務

ホワイトカラー的な頭脳労働に従事することを要求しています。
例えば、レストランを運営する企業において新たなメニューの商品企画やマーケティングのような業務であれば、十分に「技術・人文知識・国際業務」の要件を満たし、在留資格が許可されることが見込まれます。
しかし皿洗いやレジ打ちなどの単純業務に従事するのみでは要件を満たしているとはいえないでしょう。
単純労働のみに従事する、又は単純労働が労働時間の主たる部分を占めている状態になりますと、違法な就労状況になっていると言えます。
このような入管法違反の状態が続きますと、当該外国人の在留資格取消のみならず、雇用している企業(機関)についても罰則の対象となります。

外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動

単に日本国内の文化の中では育てられないような思考又は感受性に基づく一定水準以上の専門的能力を要する業務である必要があります。
具体的には「翻訳,通訳,語学の指導,広報,宣伝又は海外取引業務,服飾若しくは室内装飾に係るデザイン,商品開発その他これらに類似する業務に従事すること」(「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について、出入国在留管理庁、令和3年3月最終更新 より)と思われます。

技術・人文知識・国際業務の上陸許可基準適合性

次に「技術・人文知識・国際業務」の要件で、上陸許可基準について確認していきましょう。
※上陸許可基準は在留資格ごとに異なりますのでご注意ください。
まずは学歴・実務要件についてみていきましょう。

・従事しようとする業務に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと
・従事しようとする業務に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと
・10年以上の実務経験(大学等の関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること
のいずれかに該当する

上記は審査要領をざっくりと要約したものです。
専門知識として深いものを要求するわけではなく、また従事予定の業務と分野が一致していることを要求するものでもありません。
あくまで特段の事情がない限りは「大学を卒業していることをもって、自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を要する業務との関連性を認めて差し支えない」とされています(審査要領)。
ここにも例外が存在していて、例えば法務大臣が告示(平成二十五年法務省告示第四百三十七号)をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有していれば、この要件を満たす必要はありません。
→参考:平成二十五年法務省告示第四百三十七号
以下一部だけ抜粋して記載しておきます(詳しくは1行上の参考リンクを確認してください)。基本情報技術者試験などはお持ちの方も多いと思いますので、おそらく馴染みのある方も多いのではないでしょうか。

ロ 情報処理の促進に関する法律に基づき経済産業大臣が実施する情報処理技術者試験のうち次に掲げるもの
(1) ITストラテジスト試験
(2) システムアーキテクト試験
(3) プロジェクトマネージャ試験
(4) ネットワークスペシャリスト試験
(5) データベーススペシャリスト試験
(6) エンベデッドシステムスペシャリスト試験
(7) ITサービスマネージャ試験
(8) システム監査技術者試験
(9) 応用情報技術者試験
(10) 基本情報技術者試験
(11) 情報セキュリティマネジメント試験

https://www.moj.go.jp/isa/laws/nyukan_hourei_h09.html

外国文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務の上陸許可基準

前項の上陸許可基準は「技術・人文知識・国際業務」の学歴・実務に関係する要件となっていました。
外国文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務(いわゆる「国際業務」)については別の基準も用意されています。
次の2点をいずれも満たす必要があります。

・翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること

・従事しようとする業務に関連する3年以上の実務経験を有すること。但し大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合はこの限りでない。

原則3年以上の実務経験が必要です。
実務経験は関連する業務であればよいとされ、従事しようとする業務そのものの実務経験までは要求されないこととされています。
但し、従事しようとする方が従事しようとする業務に関連する科目を専攻して、大学等を卒業している(前項の学歴要件を満たしている)場合、学歴要件によってこの基準が満たされることとなっています。
言い換えると、大学等の卒業者でない方は実務経験3年を要することになります。
国際業務においては人文知識・技術分野での要件は、実務経験10年ではなく、3年で済むという考え方もできますね。
なお、例外として大卒者が翻訳、通訳又は語学の指導に従事する場合は実務経験が必要ありません。
これは専攻を問わないことを意味していると思います(外国人の母国語に係るものが通常であることが理由として挙げられています)。

報酬に関する上陸許可基準

報酬基準に関しては1点のみです。

同じ業務を日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

この報酬基準が規定されているのは技人国だけではありません。
他には「経営・管理」、「研究」、「教育」、「企業内転勤」、「介護」、「興行」、及び「技能」において規定があります。
では、具体的に金額として明示されているのでしょうかという点が気になるかと思います。「興行」において月額20万円という明示はあるものの、相対的な判断も加味されます。
つまり、その企業で働いている同じくらいの役職の日本人と同等以上か、又は同業種の他企業の同じくらいの役職の日本人と比べてどうか、という点です。
例えば同じ企業で働く日本人と同じ給与テーブルであれば問題ないと思われます。
なお報酬には賞与は含まれますが、通勤手当や住宅手当等(実費弁償の性格を有するもので課税対象となるものを除く。)は含まれません。
不当に安い報酬であったり、他の同等の業務を行う日本人に比して当該外国人の報酬が安い場合(日本人は月額25万円だが、外国人は20万円 など)は上陸許可基準を満たさないと考えた方がよいでしょう。
報酬がほかの日本人より高い場合については問題ありません。

さいごに

ここまで技術・人文知識・国際業務における「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」について確認してきました。
この2点を満たしているかどうかが申請の肝になりますが、この2点を満たしていたとしても必ず許可が下りるわけではありません。ここが在留資格(在留VISA)の難しいところです。
入管庁(法務省)には審査における裁量がありますので、どのような書類を提出するかによって、許可が下りたり下りなかったり、はたまた1年更新(在留期間が1年)になったり3年更新になったり・・・。
入管庁のサイトに提出すべき書類の一覧が記載されています。
書類の内容を補強するために理由書を作成する必要があるかもしれません(ただし嘘はいけません必ずバレますし、罰則があります。それだけではなく、将来的に永住や帰化を狙う場合に、嘘を申告した事実が重くのしかかります)。
この理由書に、必要書類内で表現しきれなかった内容や審査官にぜひ伝えておくべき内容を盛り込むことができます。
入管での審査は書面審査ですので、提出する書類がすべてを左右します。
「理由書の書き方が分からない」などは当事務所にてサポートさせていただきます(作成にあたり事前面談が必要です)。

当事務所では在留資格申請、在留期間更新などの申請サポートを行っています。
もし書類作成などでお困りのことや分からないことがありましたら、まずは下記のボタンからご連絡ください。
当事務所の代表が親切丁寧に対応させていただきます。
当事務所は東京都大田区上池台にあり、最寄り駅は東急池上線「長原駅」となります。
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